成長のための融資でもノウハウが不足する地銀
とうきょうファンドは今年に入って、次々と融資を実行しているが、第1号案件はこんな成長企業だ。
自動車整備工場に対して中古機材や自社開発機材を提供するオルタライフ(埼玉県戸田市)。08年の創業と若い企業だが、目の付けどころが良く急成長を遂げている。
自動車整備工場は毎年、約1500の工場が廃業し、約2000の工場が新規開業するという新陳代謝の激しい業界で、町工場クラスの小規模な整備工場は全国に約9万社も存在する。このクラスは競合大手がターゲットにしておらず、中古など安価な機材の提供を始めると、対応が追いつかないほどの引き合いが来るようになった。
オルタライフは、上場を視野に入れて監査法人の監査を導入した。すると、売上基準など会計基準の変更のために14年4月期が赤字決算となった。こうなると市中銀行が一気に新規融資を渋るようになった。
オルタライフにはこんなビジネスプランがある。整備工場の新規開業や既存工場の拡充は、中古機材といっても経営者に重い負担がのしかかる。そこで、オルタライフが資金提供もセットで支援しようというのだ。自動車販売会社がローンも一体で手掛けるようなものだが、確かにそうなれば事業拡大のスピードはさらに上がるだろう。
そのためには資金が要る。しかし、市中銀行は「直近の決算が赤字」という理由で貸してくれない。今期、月次ベースで見れば、黒字が拡大しているにもかかわらず、である。
過去に赤字や債務超過があると、事業性があっても、決算書だけでスネに傷ある企業と認定されてしまうのはなぜなのか。その一つの理由は、預金者保護という大命題だろう。
銀行は、貸出先を「正常先」、「要注意先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先」、「破綻先」という5つの債務者区分に分け、リスクに応じた引当金を積んでおかなければならない。赤字や債務超過は、正常先から債務者区分を下げる大きな要因になってしまう。金融庁の検査では、一つ一つの債権について念入りにチェックされるし、引当金はコストとして利益に直撃するから、銀行としては、リスクマネーの供給には慎重にならざるを得ない。
銀行の側に存在する、もう一つの理屈は規模の経済だろう。「事業再生にかける手間は大企業でも中小企業でもそう変わらない。大企業の百億円、千億円単位という規模感ならやる気にもなるが、一億円、十億円の単位で同じ手間はかけられない」という理屈。中小企業では割に合わないのだ。