そうは言っても、スネに傷あれど事業性もある中小企業を救えるかどうかは、地域経済とそれを支える地銀の今後を大きく左右するだろう。日本航空(JAL)など大規模再生案件の経験が豊かな政投銀がノウハウ面で地銀を支えるというスキームは、民営化プロセスが先送りになった政投銀にとっても意義深い。
とうきょうファンドの規模は現在30億円。全額融資しても5%の金利なら年間収益は1.5億円。3社で分ければ5000万円。人件費を考えれば、まだ決して収益性は高くない。「案件を数多く手掛け、早期の2号、3号のファンド組成を目指したい」(都民銀の渡邊部長)。案件の決裁を迅速化し、丁寧な審査と規模のメリットを両立できるかどうかが、今後の鍵を握る。
事業性と経営者に注目して金を貸すのは、銀行の本業そのもののはずだ。不良債権処理やスコアリング融資を経て、顔の見える融資という本業を忘れてしまった銀行が目覚めなければ、中小企業が支える日本経済の浮上はない。本稿でとりあげた若き銀行マンの志が金融界に拡散することを期待したい。
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