経済の常識 VS 政策の非常識

2015年3月10日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 日本の企業はキャッシュを溜め込みすぎていると非難されている。キャッシュと言っても、もちろん、現金だけでなく預金など、すぐにキャッシュになるもののすべてだ。預金を持っていても金利はわずかだから、企業の自己資本利益率(ROE)を引き下げる要因になる。

 ROE重視の経営が市場に評価される中で、なんでわざわざROEを下げるようなことをするのかと非難されている。賃上げで物価を上げ、デフレから脱却して物価上昇と賃金上昇の好循環をもたらしたい政府からも、無駄にキャッシュを持っているくらいなら賃金を上げろと要請されている。

 日本の企業がキャッシュを積み上げているのは事実である。日本の非金融民間法人の実物資産を含めた総資産は1777兆円、うち現金と預金が219兆円、銀行借り入れや企業間信用などの負債が679兆円である(内閣府『2013年度国民経済計算確報』。679兆円の借金に対して219兆円もの現預金を持っているというのはおかしい。6790万円の住宅ローンを持っている家計が、2190万円もの現預金を持っていることはないだろう。

GETTY IMAGES

 まして企業は、自分の仕事に投資をして利益を上げるのが目的だから、預金をしていても意味がない。そんな遊ばせているお金があるなら、投資をするか、借金を返すか、労働者に還元して賃上げするか、株主に還元して配当を増やすかすべきであるというのは当然の理屈である。

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