対談

2015年4月8日

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丸山:なんかね、大人になっちゃったな(笑)。この人は何を考えているんだろう? という得体のしれない魅力が、初期は強かったですよね。もやもやしていたものをそのまま出していて、それがものすごく響く学生もいたんです。今は誰からも理解されやすい話で、共鳴とは違う種類のものをもたらしているんでしょうね。

久松:当時はまだブログも始める前で、考えをまとまった形で言葉にしているのは先生の講義だけなんですよ。独立から2005年までの7年間はさらに闇の中ですから(笑)。とにかく本人はガチで、まったく相対化されていない話でしたけど、それをまた先生が乱暴に斬るんです(笑)。講義の前に「特殊なケースだから8割は割り引いて聞くように」とか言うんですよ、ひどいじゃないですか。肥料とか農薬とか、当時の僕には人生を賭けたテーマで、でも学生さんはポカンとしていた。でもね、それが健全ですよね。

――初期の試行錯誤は昨年末刊行の『小さくて強い農業をつくる』でもかなり書かれていらっしゃいますけど、科学的に考える姿勢は当時からあったんですか?

久松:初期はそれほどなかったです。ほかの有機農家に対する対抗意識で「俺は科学で行くんだ。既存の有機農業の考え方だけで全部うまくいくはずないんだ」とは思っていたかも知れませんね。『小さくて強い農業をつくる』でも書きましたが、土壌肥料学の第一人者である岩田進午先生をお呼びして勉強会をやったことが転機でしたね。「この工程、この現象はすべて理由があることなんだ」「何となく良さそうだと思っていたことだけど、やっぱり良いものなんだ」とわかった。ただ、良さを実現する栽培技術はまだなかったんです。

 その後にお会いした科学ジャーナリストの松永和紀さんも、丸山先生も「君のやっているのはこういうことなんじゃないの?」と厳しく突っ込んでくれる人たちです。僕にとっては素敵な人で、その人たちにも納得してもらえるものを作りたい。だから自分なりに勉強もする。そのうち、勉強したことに栽培技術が追い付いてくると、ほかの人の栽培技術も見えるようになってくる。よく管理されている畑は、農薬使用量も少ないんです。良いタイミングで無駄なく作業しているからで、たとえば蛾であれば蛾が活動する夜間におびき寄せて、防除するのが合理的なんです。合理的に管理された畑が見た目も美しいとわかるようになったのは、かなり最近の話ですね。

 自分の志向と完全にマッチする教科書はなかったから、学んだことを現場で悶々と考える。幸福だったのはアタマで考える過程と、栽培技術で身体的に学ぶ過程がほぼ同時期に起こっていたことなんだと思います。

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