2024年7月22日(月)

Wedge REPORT

2015年5月6日

保守党党首のキャメロン首相 (HANDOUT/GETTYIMAGES)

 05年に保守党党首となったデイヴィッド・キャメロンは中道右派に属しており、プラグマティック(実利主義的)な政治姿勢を特徴としていた。しかしながら、39歳で党首となり、政治経験も浅く党内基盤も弱かったために、どうしても保守党内の欧州懐疑派の協力を仰がねばならなかった。したがって、キャメロンは保守党の党首選の際に、欧州議会において中道右派政党グループとしての欧州人民党(EPP)から離脱して、独自のイギリス保守党として活動をすることを公約にした。

 10年のイギリス総選挙で、キャメロン党首の保守党は「イギリス国民の同意なくしては、これ以上イギリスの権限をEUに委譲することはない」とマニフェストに記していた。さらには、イギリス国民の同意なく批准したリスボン条約を「この国の民主的な伝統への裏切り」と、過激な表現を用いて批判した。そのような戦略が一定程度奏功し、キャメロンは首相に就任した。

EU離脱の可能性

 キャメロン首相は13年1月23日に、党内の欧州懐疑派からの強い圧力に押されて、イギリスのEUからの離脱の可能性を示唆する演説を行った。このキャメロンの演説によれば、15年の総選挙で保守党が勝利した場合には、17年までにイギリスのEU加盟継続を問う国民投票を実施することになる。おそらくこれは党内右派勢力への配慮により行われた演説であり、次の選挙でUKIPに票を奪われないための措置であることがわかる。キャメロン首相自身は、EU離脱を回避したいと述べている。

 しかしながら、世論調査を行えば多くの場合にEUへの加盟に批判的な声が多数となる現状では、国民投票を実施した際にイギリスが実際にEUから離脱する可能性は少なくない。このような演説が可能になったのは、09年12月に発効した、マーストリヒト条約を改正するリスボン条約に、はじめてEUの条約として離脱のための条項が含まれていたからである。

 これはどちらかといえば、民主主義や人権を守らない可能性がある冷戦後の新規加盟国を想定して挿入されたものであろうが、この条項を用いて保守党は実際にイギリスのEU離脱の可能性を問うているのである。

 キャメロン首相は13年1月の演説の中で、「もしわれわれがEUを去るとしても、それはもちろん、ヨーロッパから去るということにはならない」と述べ、「離脱後もEUはわれわれにとっての最大の市場であり、われわれにとっての地理的な隣人である」と述べている。結局イギリス人にとっては、EUとは自らのアイデンティティではなく「隣人」に過ぎないのであろう。


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