そのような動向は、EU主要国のイギリスやフランスにおいても見ることができる。昨年5月の欧州議会選挙では、移民の制限を政策理念として掲げ、EUへの遠慮のない批判で支持を集めてきた極右政党のUKIPと国民戦線(FN)が議席数の確保において、それぞれ第一党になるという結果になった。それは、ナイジェル・ファラージュとマリーヌ・ルペンという2人のカリスマ的な極右の指導者に負うところが大きかった。
フランスの極右政党・FNのマリーヌ・ルペン党首 (CHESNOT/GETTYIMAGES)
ヨーロッパ政治の混迷
何かがおかしい。多くの国で穏健な中道政党が議席を減らし、過激でポピュリズム的な政党に支持が集まる。また、寛容の精神や多文化主義的な伝統というようなEUの根幹であった精神が衰弱している。それらを回復しなければ、現在直面する困難な問題を乗り越えることが難しいであろう。
最初の試練は、イギリス総選挙においてイギリス国民がどのような政権を望むかであり、さらにはギリシャの債務危機をめぐりどのようにドイツ政府とギリシャ政府が妥協を見いだせるかである。
4月にギリシャで行われた年金受給者によるデモ
(ANADOLU AGENCY/GETTYIMAGES)
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また、11月には深刻な失業率と、景気の低迷、そしてEUが求める財政緊縮政策に苦しむスペインで総選挙がある。これらのハードルをどのように越えて、新しい年を迎えることになるのか。しばらくはEUの動きから目が離せない。
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