2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月7日

 一時は終わるかと思われた中国の反腐敗運動だが、王岐山の指揮下でむしろ激しさを増している、と3月28日-4月3日号の英エコノミスト誌が報じています。

 すなわち、王岐山は、現在、中国共産党政治局のナンバー6だが、握っている権力では習近平に次ぐナンバー2であり、恐れられていることではおそらくナンバー1だろう。

 王は、党中央規律検査委員会書記として、習の意を体し、膨大な中国の党機構に対する前代未聞の大規模な反腐敗運動を指揮してきた。標的には習の政敵も含まれるが、これは単なる政治的報復ではなく、治安機関、人民解放軍、国営企業も対象とし、王指揮下の何万もの捜査官が役人も経営者も、そして捜査官も捕まえてきた。

 そのため、恐怖が官僚機構や国営企業の経営陣全体に広まり、混乱が生じている。多くの役人が目立つことを恐れて、重要な決定を下すのを避けていることを、党も認めている。

 反腐敗運動は、今のところ指導部で支持を得ているようで、政治局常務委員会の他のメンバー5人も、前政治局常務委員で治安機関のトップだった周永康や、軍のナンバー2だった徐才厚の逮捕を承認している。

 勿論、中国指導部内の議論は厚い秘密のベールに覆われており、彼らが習にとってどの程度の脅威かを判断するのは難しい。ただ、昨秋、役人の士気低下が著しいため、反腐敗運動はまもなく終息するだろう、と党指導部に近い筋は言っていたが、これは甘い考えだったかもしれない。運動はむしろ過熱しており、この7ヶ月間でさらに24人の閣僚級の役人が腐敗容疑で捕まっている。

 王は2017年に引退するが、「トラ」退治を続けられるよう、他の政府機関から捜査官や法廷会計士を雇うなど、規律検査委員会の強化に努めており、検挙する側の役人を監視するための強力な内務機関も創設した。

 一方、独自に党の腐敗問題を追及する活動家たちは、腐敗役人と同様に容赦なく抑え込まれている。習はこれまでも物言う弁護士らを投獄し、メディアやインターネット規制を強化するなど、反対意見を厳しく弾圧してきた。


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