2024年12月14日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年3月5日

 2015年2月17日、中国共産党中央委員会の機関紙である人民日報が注目すべき記事を一面トップで掲載した。「中央指導者が老同志を訪ねる」と題するこの記事は、19日から始まる中国の旧正月を目前に、習近平主席など現役の「中央指導者」らが、既に引退した江沢民や胡錦濤などの元指導者(老同志)を訪ねて新年のご挨拶を行ったという内容である。注目すべきなのは、訪ねられた「老同志」全員の名簿を、人民日報記事が丁寧に掲載して公表した点である。

 それは、たとえば2014年の旧正月の対応とは全然違う。2014年1月29日に同じタイトルと内容の記事が人民日報に掲載されたが、その時、記事が名前を挙げた「老同志」は江沢民と胡錦濤の2名だけで、全員の名簿の発表はなかった。それでは一体どうして、今年は「老同志」全員の名簿を発表するに至ったのか。その背後にあるのは、習近平指導部が進めている「腐敗撲滅運動」の変調ではなかろうか。

次の「トラ」と噂の
曽慶紅氏、郭伯雄氏にも挨拶

春節祝賀会でスピーチする習近平
(写真:新華社/アフロ)

 習近平指導部が「ハエもトラも叩く」という壮絶なスローガンを掲げて強力に進めてきた腐敗撲滅運動の中で、元共産党政治局常務委員の周永康や軍の制服組のトップの徐才厚などの「大物トラ」が次から次へと摘発されたことは周知の通りであるが、実は周永康と徐才厚の失脚後、次に血祭りに上げられる「大物トラ」が一体誰なのか、ずっと関心の的となっていた。

 その中で、周永康と同様に「石油閥」出身の元江沢民派大幹部の曽慶紅氏や失脚した徐才厚と並んで軍の制服組のトップに居た郭伯雄氏などの名前が取りざたされていた。この2人がもっとも危ないのではないかというのは中国国内外でもっぱらな噂となっている。もちろん、もし2人に対する摘発が現実となれば、その意味するところは、習近平国家主席の江沢民派に対する全面戦争が決定的な段階に入るということである。

 だからこそ、つい最近までは、国内外のチャイナ・ウォッチャーたちは固唾をのんでこの2名の行く末を見守っていたところであったが、2月17日に公表された人民日報記事の「老同志」名簿には、この2名を含めた江沢民政権と胡錦濤政権の政治局常務委員・政治局委員の全員(既に失脚した周永康などを除く)があり、「老同志」として習近平など現役指導者に訪ねられて新年挨拶を受けたことが判明された。だとすれば少なくとも2月17日の時点では、彼ら全員「腐敗摘発」の追及を受けていないことが分かった。


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