2022年12月1日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年5月1日

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 以上が、安倍首相が演説の中で、アメリカとの「歴史問題」、つまり70年前に終結したあの残酷な戦争について触れた一節であるが、そこには、歴史から逃げようとするような姿勢はみじんもなければ、歴史を「歪曲」しようとする「歴史修正主義者」の面影もない。あるのはただ、日本の指導者としてのかつての戦争に対する「悔悟」であり、そして日本国民を代表して捧げるアメリカの若き戦死者に対する心からの哀悼であった。

 テレビの映像では、安倍首相による演説のこの部分を受け、静聴した米国議員がいっせいに立ち上がって拍手した場面が確認されている。「歴史」に対する安倍首相のこの語りは、アメリカ人の心を打つのには十分であり、そしてアメリカの一部で流布されている「安倍=歴史修正主義者」のイメージを払拭するのにも十分であった。

歴史との正しい向き合い方

 そしてその後、安倍首相の演説はこう続いた。「みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。こう、仰っています」

 「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉を称えることだ」

 「もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のお祖父さんこそ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした」

 「これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう」

 「熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました。スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。ほんとうに、ありがとうございました」

 演説のこの部分では、中国の挑んできた歴史戦に対して、安倍首相はまさに余裕綽々の勝利を手に入れたのではないかと、筆者は演説の原稿を読みながら強く感じずにはいられなかった。

 その前段では、アメリカとの戦争の出来事に自ら触れて戦死したアメリカ兵士に追悼を捧げることによって、安倍首相は中国などによって押しつけられた「歴史修正主義者」の誤ったイメージを完全に払拭したのは前述の通りだが、それに続いて、ここでは安倍首相は見事に、歴史を乗り越えての両国の「和解」を演出してみせたからである。

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