2022年7月3日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年5月1日

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 その演出のために、事前に新藤義孝議員をワシントンに呼んできてローレンス・スノーデン海兵隊中将の隣に座らせたのはまさに用意周到というべきものであるが、この2人を握手させる場面を米議会で演出させることによって、そして自らの語った「熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました」との詩的な言葉によって、安倍首相はアメリカとの「歴史の和解」を強く印象づけたのと同時に、過去の「歴史問題」に対する一国の指導者の正しい姿勢を世界に向かって示すことも出来た。

 そう、「和解」によって克服することこそ、歴史との正しい向き合い方であると、安倍首相は示したのである。新藤義孝議員とスノーデン海兵隊中将の拍手によって象徴された日米両国の和解は、まさに「歴史の和解」の1つの理想的な形、1つの模範的な見本として世界中の人々に提示された。

 中国の習近平主席は当然その場にはいなかったが、筆者の耳には、安倍首相の発した言葉の一つひとつが見事に、習主席たちの歪んだ論理に対する痛烈な批判にも聞こえた。日米の和解と比べれば、いつまでも「歴史」に固執する中国の了簡はいかに狭いものなのか。中国の主張する「歴史認識」はどれほど歪んでいるか。それはまさに日米の和解との対比において浮き彫りにされた。思えば、習主席はいつも日本に対して「正しい歴史認識」を求めているが、歴史をきちんと見つめた上でそれを乗り越えて未来へ向かって和解の道を歩むことこそ本当の正しい歴史認識ではないのかと、安倍首相は見事に、より高い次元から習主席の歴史認識論を完全に論破した。

 その後、演説は「アジア諸国民に苦しみを与えた事実」に触れてから、戦後日本の歩んだ「平和の道」を強調して、日本と米国は今後、アジアと世界の平和を守っていくためにどうすべきなのか、と語った。まさにこの「未来志向」の演説の部分で、安倍首相は「武力や威嚇は、自己の主張のため用いないこと」との原則を強調して中国の習政権の乱暴な覇権主義政策を暗に批判しながら、それに対処するために、日本はアメリカとの間で、「法の支配・人権・自由を尊重する価値観」の共有に基づく「希望の同盟」関係のよりいっそうの強化を訴えてその歴史的演説を結んだ。

今秋訪米予定の習近平は…

 この演説は大成功であった。議員たちの総立ちの拍手からもその反響の大きさが窺える。その場にいたバイデン副大統領やベイナー下院議長、マケイン上院軍事委員長からも高く評されたが、その中で、たとえばローラバッカー共和党下院議員による次の評価の言葉は特に注目すべきだ。

 「レーガン元大統領のスピーチ・ライターだった経験から、Aプラスを与えられる。歴史問題を威厳ある形で語った。第二次大戦に関し、首相はもう卑屈な態度を取る必要はない」

 アメリカの下院議員からこのような言葉を引き出した時点で、少なくとも中国の展開する「歴史戦」に対する反撃として、安倍首相は決定的な勝利を手に入れたと言えよう。そう、安倍首相は中国などによって押し付けられた「歴史修正主義」のマイナスイメージを完全に払拭してアメリカの政治家たちの信頼を勝ち取っただけでなく、この名演説により、日本はまさに「威厳ある態度」をもってアメリカとの「歴史問題」に永遠の決着をつけることが出来た。

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