2024年4月26日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2015年5月8日

 ニュースは、津波や台風が近づいているとか、寒波の到来に注意など、まさにその瞬間や今日、明日の生活にリアルに役立つものもあれば、時間がたってからじわじわと生活に関わってくるものもある。中東の政情不安で原油生産に影響が出ると、ガソリンや石油製品の価格がじわじわ上がってくることなどはその典型例である。

 スク-プは、いち早くニュースを読者や視聴者に届けるという意味で重要であり、それに加えて、記者がどれだけ深い取材をしているかが問われる。メディアの質の高さを判断されるとともに、報道に活気を与える役割も担っている。

 事件事故など大きなニュースに隠れて、小さな扱いにしかならない記事でも、後々に重要な意味をもってくることはたびたびあり、新聞でいう「ベタ記事」でも注意を払おうという姿勢は、全くその通りである。さらに中学の歴史や公民の教科書にのっている知識を確認すると、日々のニュースが断然おもしろくなるという指摘は、読者のニーズに合わせた形で記事や解説を構成するという面からも重要である。

 中学生にもわかる達意の文章を書くことは、筆者も新聞社に入社以来、繰り返し指導されてきたことである。本書で新鮮だったのは、中学の教科書の知識を前提にすれば、専門用語などをどの程度まで詳しく説明すればよいかが判断できるという点だ。ニュースの難易度を測る基準としても考えることができるからである。

 受け手(読者、視聴者)の立場に立って考えるというのは簡単なようで難しい。テレビやラジオのニュースも、声に出して読んだ時、聞く人の心に響かなければ、その本来の役割は果たせない。読者に届く様々なニュースや解説が、読む人の理解を助け、役に立ち、好奇心を刺激し、楽しんでもらう域にまで達することができるか。まさにニュースを送り出すジャーナリストの力量が問われる瞬間である。

  
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