この論評が、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載されたということは、米国、米国人に対する意見として書かれたものであることを示しています。
日本が歴史と向き合わないために中国に軍事力強化のための絶好の口実を与えているとか、日本が歴史を否定していることで中国の国際的地位が上がっているという議論は、説得力に欠けるものです。
論説は、安倍総理が歴史認識を改めない限り、アジア人の心はつかめず、日本はアジアの友人になれないと言っていますが、それは事実に反します。タイをはじめ、東南アジアや南アジアの国々は、太平洋戦争に関し、日本が侵略を認め、お詫びをすべきだとは言っていません。歴史認識はすぐれて中韓2国の問題です。
1つ言えることは、今後どのような形で歴史認識問題に言及するにしても、それで中国と韓国の批判が収まるとは思われないことです。20年前、戦後50年の年に、村山談話が「植民地支配と侵略」に触れ、「心からのお詫び」を述べたにもかかわらず、中国と韓国は、それで歴史認識問題に区切りがつけられたとは思いませんでした。歴史認識問題に関する両国の批判は、今後も続くと覚悟しなくてはならないでしょう。
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