コンパクト・デジタルカメラは
なぜ衰退したか
100年以上続いたフィルムの時代が、デジタルカメラの出現によって終焉を迎えたのは2002年ごろだった。レンズ交換ができないタイプの一般向けのコンパクト・デジタルカメラは、2008年の1.1億台というピークまで年間の出荷台数を急激に伸ばした。しかし、リーマンショックの後の2010年には1億台を回復したものの、その後、下降線をたどり続け、2014年には3000万台を切るところまで一気に落ち込んでしまった。
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人々が写真に興味を失ったわけではない。写真を撮らなくなってしまったわけでもない。ただ、新しいコンパクト・デジタルカメラを買わなくなってしまっただけだ。新しい製品が発売されても、すでに持っているコンパクト・デジタルカメラで、もう十分だと思うようになったことが、その一つの理由と考えられる。ハードに機能を詰め込むだけで、製品の価値を上げていくことができる旬の時間が過ぎてしまったのだ。
そして、2010年にiPhone4が発売されて、Androidのスマートフォンとともに急速にその市場を拡大していった影響が大きかったと考えるべきだろう。インターネットに繋がっているスマートフォンのカメラによって、新しい写真の楽しみ方に気づいた人々は、スマートフォンで写真を撮ることに夢中になり、デジタルカメラを使わなくなってしまった。
それでも、デジタルカメラで写真を撮り続けている人はまだ大勢いる。プロフェッショナルやアドバンスド・アマチュアと呼ばれる写真を趣味にする人たちだけではない。観光地では、レンズ交換ができる一眼レフやミラーレスという高級カメラだけではなく、コンパクト・デジタルカメラで写真を撮っている人を多く見かける。しかし、まもなくそのような光景も見られなくなるかもしれない。
Googleフォトの価値
写真の枚数は無制限、保管期間も無期限
コンパクト・カメラとスマートフォンのカメラで撮ることができる写真の品質(画質)に、大きな差があると思っている人は少ないだろう。しかし、これまでスマートフォンのカメラには弱点が2つあった。
スマートフォンの内蔵メモリーの容量には限りがある。それはアプリや音楽やダウンロードしたゲームなどで、残りが少なくなっていることが多い。旅行やイベントなどで沢山の写真を撮るとメモリーが足りなくなってしまうことがある。すでに撮ってあった大切な写真を消さなければならないかもしれない。