ビデオカメラが売れなくなってしまったのは、スマートフォンが普及したからではない。顧客が諦めていることを理解し、それを解決しようとする努力を怠っていたからだ。
ゴープロ(GoPro)をご存知だろうか。名前を聞いたことがなくても、テレビのバラエティー番組でバンジージャンプをするタレントの恐怖の表情を撮影するために、ヘルメットにアームで取り付けられた小さなビデオカメラを目にしたことがあるかもしれない。あるいは空中からの映像やカメラマンが居ないはずの狭い車内などの映像をどうやって撮影したのだろうと思うことがあったかもしれない。いまやそれらの新しい映像のほとんどがゴープロ社というアメリカのベンチャー企業が開発したゴープロシリーズのビデオカメラで撮影されたものだ。
このゴープロ社は2014年6月26日、米ナスダック市場でのIPO(新規株公開)を果たした。申請時に公開された資料によって11年が114万台、12年231万台、13年384万台と、これまで公表されなかったゴープロシリーズの出荷台数が明らかになった。ソニーの業績資料によるとソニーのビデオカメラは、対照的に12年370万台、13年230万台となっているから、昨年のうちにゴープロ社が台数ベースでソニーを抜いてビデオカメラ市場のトップに躍り出ていたことになる。米調査会社IDCの資料から得たビデオカメラ全体の出荷台数とともにグラフにしてみた。
ビデオカメラ市場の縮小に伴ってソニーの出荷台数が同じように減っているのがわかる。全体の出荷台数からゴープロの数値を引いて比較すると13年は市場全体もソニーの出荷台数も対前年で同じような割合で落ち込んでいることがわかる。
ソニーなど国内のビデオカメラメーカーが、ゴープロと同じアクションカメラと呼ばれるジャンルのビデオカメラを市場に投入している。ゴープロのハードやソフトに特別に新しい技術が使われているということはないので、機能的にゴープロと同様もしくはそれ以上のものを作ることはさほど難しいことではない。日本のビデオカメラメーカーは、なぜ最初にゴープロを考えだすことができなかったのだろう。