大都市のスラム化
編:大阪はどうなりますか
上山:都構想の否決が都市経営に与える影響は計り知れない。市役所改革はなかなか進まず、既得権益は維持される。議会はカジノ誘致の調査費すら否決したが海外からみると奇異だろう。おそらく外資は大阪への投資を避けるようになる。優秀な人材の流入も減って都市全体が急速にスラム化、困窮化し、やがて財政破綻するだろう。
(出所:大阪市ウェブサイト)
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大阪の衰退の一因は国にもある。政令指定都市制度は右肩下がりの経済や大都市の衰退を想定していないが、国力が減退すると地方で食べられなくなった人たちが都市に集まる。すると都市行政は犯罪対策から生活保護、医療・介護まで基本機能の維持に追われる。これまでは大都市は豊かだから自活しろという前提で、ろくな税源の手当てもないままに行政サービスは全部、政令指定都市にやらせてきたが、市の税収はいつまでたっても固定資産税と住民税が中心で辻褄が合わない。
国の固執する政令都市制度に縛られていたら、大阪市は早晩、破綻する。だから府と一緒になって生き残ろう、成長のための投資をしよう、別の言い方をすればもっと大きな財布にして大阪市を維持する財源を確保しようというのが今回の都構想だった。しかし市民にその意味が理解されなかった。
編:大阪に限った問題ではない
上山:そう。大都市問題は大阪だけではなく、全国で深刻化する。これに早めに対処するのは国の責任だ。本来は、国が、「政令指定都市制度はもはや限界」と宣言し、大都市制度の見直しを誘導すべきだ。方法は特別市制度でもいいし、都区制度でもよく、それは地域が選べばいい。あるいは大都市制度は各地の自由にゆだねる。
そもそも国は3年前に、大都市行政の方向性を全く示さずに単に「大阪がうるさいから」とばかりに大都市特別区設置法という、万に一つの実現可能性しかない法律をつくった。地元の2議会が議決し、さらに住民投票もなんてハードルが高すぎる。