2024年4月26日(金)

WEDGE REPORT

2015年7月7日

 空中給油によってこうした遠方からの作戦は可能であるが、第1列島線付近で常時在空することは難しくなり、中国軍が航空優勢を握る場面が増えることが予想される。その結果、味方の航空機の援護を常時受けることが難しくなった米軍や第1列島線諸国軍の海上戦力、特に水上艦艇は第1列島線付近から退避せざるをえなくなる。そして、第1列島線には地上戦力が残される。

 では、第1列島線に残った地上戦力は航空優勢が常時確保できない中でも生き残れるのか。地上戦力は地形、植生、人工構築物、人工素材等を利用した掩蔽や隠蔽、デコイ(囮)による偽騙、加えて頻繁な小移動や分散が可能である。

空爆のみで敵の地上部隊を
壊滅させた例は見当たらない

 このため、空中や宇宙からの情報収集手段が発達した現代でも地上戦力を全て発見することは難しい。発見されなければ、正確な攻撃を受けることもない。歴史上、航空優勢を確保している側が空爆のみで敵の地上部隊を壊滅させた例は見当たらないのは、このためである。

 地上戦力とは、地上戦力によるしらみつぶしの攻撃によってのみ撃滅できるという厄介な代物だ。元米陸軍軍人であり敵の航空優勢下での地上戦力の残存性を熟知しているクレピネビッチだからこそ、中国軍の海上・航空優勢獲得を拒否する役割を第1列島線に残った地上戦力に期待しているのだ。

 クレピネビッチは地上戦力に下記の役割を期待しており、陸上戦力がこうした役割を果たすことで海上・航空戦力は努力を分散することなく、遠距離偵察や空爆などの任務に重点志向できると述べている。

1. 中国軍の海上・航空優勢獲得を直接拒否する役割

(1) 地対空ミサイルおよび地対艦ミサイルにより空中・水上からの接近を拒否

(2) ロケットランチャー、ヘリコプター、舟艇による機雷敷設およびロケットランチャーによる対潜魚雷の投射により水上・水中からの接近を拒否

(3) 島嶼への上陸・占拠を拒否

2. 味方の作戦基盤を防護する役割

島嶼と海底に設置された光ケーブルを防護し、戦闘ネットワークを維持

3. 拒否的抑止に資する役割

地対地ミサイルによる敵地攻撃   


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