2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年8月3日

 もしギリシャがユーロ圏を離脱するならば、ロシアの軍艦をギリシャの港から排除するために、ギリシャ経済が回復するよう支援することは、明らかに欧州および米国の利益になる。ユーロであろうがドラクマであろうが、ギリシャは国の建直しを必要としている、と述べています。

出 典:Robert D. Kaplan ‘The Greek Crisis Is About More Than Money’(Wall Street Journal, June 30, 2015)
http://www.wsj.com/articles/SB11486026120286184909004581077960515036484

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 カプランは、ギリシャに住んだことがあるようでもあり、書かれていることは正しいのだと思います。簡単にいえば、ギリシャは国の体をなしていないということであり、それだけに、EU側は、ギリシャ政府の改革の実行能力に確信が持てず、交渉は微に入り細を穿ったものとなり、これにギリシャが反発するという構図があったのかと思います。そういう状況にロシアが付け入り、背後で工作を試みていることは当然あり得ることでしょう。

 この論説が指摘するギリシャの地政学的な重要性とギリシャのロシアに対する一種の脆弱性には、十分留意する必要があるでしょう。1947年3月の「トルーマン・ドクトリン」の契機となったソ連に支援された共産主義ゲリラによるギリシャの内戦を想起させられますが、ギリシャはロシアにとって悪戯を仕掛けやすい場所なのではないでしょうか。プーチン露大統領が、西側不安定化のためにバルカンを工作の焦点にしているとの観測は他にもあります。ギリシャにロシアが足場を築くことは悪夢でしかありません。

 オバマ米大統領は、メルケル独首相およびオランド仏大統領に、ギリシャをユーロ圏にとどめ置くよう要請していると伝えられますが、地政学的な考慮もあってのことでしょう。

  
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