今年5月、追い込み漁に関する法令が改正
昨年、フェロー諸島には約500人のSS活動家が訪れ、漁に対する妨害が行われた。うち14人が違法妨害を行った罪で逮捕された。この教訓をもとに今年5月に、追い込み漁に関する法律が改正され、悪質な妨害行為を働いた者に関しては、最大で約2年の禁錮刑、約2万5千デンマーク・クローネ(約47万円)を科すことにした。
一方、フェロー諸島自治政府は、追い込み漁に対する情報発信も積極的に行っており、専門のHPでは、漁の歴史やゴンドウクジラの生態、料理方法、規則などのほか、フェロー諸島全般についてわかりやすく学ぶことができる。
◯フェロー諸島自治政府の捕鯨専門サイトhttp://www.whaling.fo/
自治政府内では、英語ができる広報専門官も置いており、世界各国のメディアから問い合わせがあると、迅速な対応を行う。メディアの報道がシー・シェパード側の一方的な宣伝に偏り、間違いが散見されたときも、公式HPできっちりと反論する。
6月にも米誌ニューズウィークの追い込み漁に関する記事に「重大な事実誤認があった」と公式声明を発表した。「今回、取材や記事の執筆に当たり、ニューズウィークの記者がフェロー当局や他の関係者にまったく連絡しなかったことに驚きの念を禁じ得ない」とも指摘、同誌の誤りを質した。
一方、日本ではフェロー諸島で行われているような過激活動家に対する法整備や、行政機関の迅速で客観的な情報発信は立ち遅れたままだ。
和歌山県太地町には今年9月から解禁される追い込み漁でも、例年同様、シー・シェパードの活動家が大挙として押し寄せる可能性もある。
人口3千人の太地町では対応にも限界があり、一義的には和歌山県が積極的で迅速な対応をすべきと考える。専門のHPを開設したり、世界中のメディアの記者に対応するため、英語ができる広報専門官を置くことは、低予算ですぐにでもできるはずだ。追い込み漁の実態をオープンにして、漁が行われている時期に、日本の特派員らを招待して、太地町へメディアツアーを行うのも一考の価値があるのではないだろうか。
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