2024年12月22日(日)

田部康喜のTV読本

2015年8月5日

 「お言葉を返すようですが……」。東京第一銀行の内部不正を調査する臨店班の活躍を描く「花咲舞が黙ってない」シリーズが夏ドラマで再登場して、視聴率も一人勝ちの状態である。主人公の花咲(杏)の決め台詞が今回も「お約束」である。

 帝都物産の新人女性社員の吉井英美里(武井咲)が、総務部員となって、社内のハラスメントと戦う「エイジハラスメント」も、「花咲」を追走している。こちらのお約束は、英美里が握り拳をぐっと固めて「テメェ、五寸釘ぶちこむぞ!」とつぶやいて、理不尽な上司らに挑む。

 企業ドラマは、その内部に観客の視点を誘う。表面的には知っているようで、実ははっきりとはわかない企業の実態を見せていく。

 ドラマは、普段は知りえない人々の喜怒哀楽を見せてくれる。そこには、事実の風刺という「戯画」(caricature)がある。

銀行の内部を覗いた気分になる「花咲」

 「花咲」第4話(7月29日)は、町田支店の融資課の女性行員である、前原美樹(中越典子)が謎のストーカーにつきまとわれている、という事件である。自宅のマンションに忍び込んだ形跡もあった。

 支店長の春日直道(山田純大)と、融資課長の小見山巧(渡辺いっけい)が事なかれ主義で、臨店班の相馬健(上川隆也)と舞(杏)の調査にも非協力的である。

 相馬と舞は、美樹と相談したうえで、帰宅する彼女の跡をつける。マスクで顔を隠した男を取り押さえてみれば、融資課の後輩だった。美樹にあこがれをもった末の行動だったが、自宅に侵入したことは否定する。

 美樹は支店が融資して、数億円の負債を抱えて倒産した企業の調査を内々にしていた。自宅に持ってきていたその企業のファイルの一部がなくなっていることに、臨店の相馬は気づく。それは、振込先の一覧だった。

 相馬と舞は徹夜で、本店のデータベースからその企業の振り込み実績を一点一点、確認して、ついに不審な振り込み500万円にたどり着く。それは、融資課長の小見山の妻が経営している幽霊会社だった。企業の倒産自体が、小見山と経営者が示し合わせた計画倒産だったことがわかる。振り込みはその謝礼である。


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