国土と日本人

2015年9月1日

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首脳たちのインフラ認識

 世界の首脳たちの公共事業やインフラについての発言を見ると、わが国がいかに世界と外れているのか明らかとなる。

 オバマ大統領は繰り返しインフラ整備の重要性にふれている。

 2014年5月には、「新たな仕事を創出しアメリカ経済を刺激する最善の方法の一つは、国内のインフラを再構築することだ。(略)アメリカが世界第一の経済超大国に成長した理由の一つは、世界最高の交通システムを作り上げたことだ。」と演説して、特に交通インフラ整備の重要性を強調した。

 また2015年1月の一般教書演説でも、「21世紀のビジネスと経済に見合ったインフラの整備が必要であることは、与野党双方が同意している。」と述べ、ここでもインフラを強調した。

 イギリスのキャメロン首相は、2012年3月、「インフラは国のビジネスの競争力に影響し、またビジネスを成功へと導く見えない糸である。(略)もし、われわれのインフラが二流になれば、われわれの国も二流になる。」と述べて、現代社会におけるインフラの重要性を語った。

 ドイツのメルケル首相も、2013年12月の三党連立合意文書において次のような見解を示した。交通分野における基本姿勢として、「モビリティは個人の自由、社会参加及び豊かさと経済成長のための重要な前提となるものである。そのために必要な基盤が質の高い交通インフラである。それは、欧州及びグローバル社会におけるドイツの競争力を保障するものとなる。」

 連立政権を組むにあたって、合意文書にインフラ整備の考え方の統一を図るなど、わが国ではまったく考えられない感覚であるが、EU問題はドイツ問題であるといわれるほどに格段に強い競争力を持つドイツが、さらに交通インフラの充実によってその強化を図ることを三政党の連立条件としたのだ。

 先般来日したイタリアのレンツィ首相も、来日中の2015年8月インタビューに応じて、「インフラへの投資は重要である。予算が制約されていても、インフラへの投資は長期的な経済成長に貢献するからだ。」と述べたのである。

 こうしたインフラ認識に対して、インフラというストックで語るわが国の政治家はまず見当たらないが、公共事業についての認識を示すことはある。典型例を紹介すると、2012年4月の野田佳彦民主党代表(当時)の見解は次のようであった。

 「まだまだ至らぬ点があることを率直にお詫び申し上げるが、公共事業費を三割以上削減するなど、政権交代以前にはできなかったことが次々と実現している。」と、このように胸を張ったのだ。

 公共事業がインフラストックの形成手段であることを考えると、アメリカ大統領などの発言との違いに愕然とする思いである。何しろ、財政支出の観点からしか見ていないのである。

表1

 表1にGDPの消費サイドの定義を示すが、これに明らかなように公共事業費(=公的固定資本)の削減は、他の項目の増加がない限りGDPを縮小させ、その結果必ず将来税収を下げる効果を持ってしまうのである。

 したがって、野田氏は将来税収を下げるのに貢献してしまったのである。結局、野田氏が率いる政権は、次世代の人々が、安全に効率的に、かつ快適に暮らせる環境整備を三割以上も遅らせたということだし、わが国の競争力の向上を三割以上も阻害したのだ。

 これは定義式から導かれる結論であるから絶対的に真実なのだが、この単純な事実が当面の歳出削減優先の前で、わが国ではなかなか理解されず、わが国のインフラ整備水準の先進各国と比較した劣後化が止まないのである。

⇒(続く) 

 

  


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