定年バックパッカー海外放浪記

2015年9月27日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

 「良く知っているね。実はあの事件の当日は俺の親友が当番で偵察機を操縦していたんだ。一日違えば俺の当番だった。米海軍の名誉のために断言するけど米軍偵察機は領空ラインの外側で合法的な偵察活動を通常どおり遂行していただけだ。」

 「当時の中国の発表では米軍機が領空侵犯して偵察活動を強行したので中国の戦闘機が緊急発進したと記憶しているけど。そして中国の戦闘機の警告を無視して、さらに中国機の進路を妨害して接触事故となり中国機が墜落したと中国は主張していたようだが。」

 「知っているとは思うが電子偵察機は機密情報を満載している。偵察機からは不時着までに機密データは廃棄処理すると嘉手納に緊急通報があったが、どこまで廃棄できたか確認する方法がなかった。不時着と同時に乗員全員が中国側官憲に拘束されたからね。そもそも機体そのものが機密情報で覆われている。そして拘留された乗組員を早急に取り戻す必要があった。それで乗員と機体を至急返還させるためにデリケートな外交交渉をしたんだよ。」

 「それじゃあ、外交戦術の観点から、米国は衝突事件について早急に和解するため中国報道に対して余り反論しなかったということだね。」

 「そういうことさ。事実は中国のプロパガンダとは逆だよ。中国機のパイロットは無謀な挑発行動を仕掛けてきたんだ。即ち、偵察機の後ろ下方から偵察機の進行方向を遮るようにアクロバティックに飛んで来た。」

 「人民日報国際版では偵察機の領空侵犯を阻止しようとした“愛国の烈士”“空の英雄”として墜落死したパイロットについて大々的に宣伝報道されていたけど。」

 「プロのパイロットなら絶対にやらない軽率で無謀な行為だ。いずれにせよ、偵察機は緊急回避できず主翼の一部が中国機と接触した。エンジン一基が即時停止。それから数分後にさらにエンジン一基が停止した。」

 「エンジン2基でも飛行は可能なの?」

 「エンジン1基でも飛行継続できるように設計されている。しかし問題は燃費だ。エンジン2基だけでは燃費が著しく低下して嘉手納まで戻れないと俺の親友は咄嗟に計算した。それで一番近くて偵察機が着陸できる滑走路がある海南島への不時着を決断したんだ。」

 「難しい判断だったね」

 「哨戒活動や偵察活動は夜間飛行のミッションが多く神経を使う仕事だったよ。それから俺は40近くになってシチリア島に転属となった。現在は双発のビーチクラフトで地中海の哨戒活動を主にやっている。」

 「そうか。サンディエゴ、ハワイ、沖縄、シチリアと素晴らしいリゾートエリアに基地を展開するのが国防総省(ペンタゴン)の世界戦略なのか」

 「当然だろう。そうじゃなきゃ、優秀なパイロット候補生が集まらないぜ。」

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