2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2015年9月25日

 その後Aさんは東南アジアに課長職で派遣された。海外で成績を残せば、以前は帰国後に管理職登用されていたが、人事滞留でそれもなくなった。結局昇格できなかったAさんは、すでに手をつけていた副業の道を本格的に追求し始める。

 仕事柄ITに強い。友人の協力も仰いで、まず夜街ポータルサイトを立ち上げ、広告集稿に成功。ある程度まとまった金を手にしたAさんは、美容サロンのオーナーになって、2年半で経営を軌道に乗せた。

年間で1000万円を超す副業収入

 安定的収入が自動的に入ってくるようになったAさんは、土日休日を使って、コンサルティングを行ったり、FXなどの資金運用のノウハウも積み、合わせれば年間で1000万円を超す副業収入を得ているという。

 「大企業の正社員という“資格”を維持することは、投資ポートフォリオ的に言えば、“国債投資”みたいなものです。住宅ローンも組めるし、クレジットカードもつくれるし、福利厚生もよい。9時~5時できちんと働けば、残業など一切しなくても、求められる成果くらいは余裕で出せますし。この資格を手放す気はないですね」

 日本の大企業は、絶対に処遇しきれない、大量のオジサンを抱えてどこへ行くのか。右肩上がり成長を前提にした長期雇用や年功賃金が維持できないことは、とっくの昔にわかっている。残業を減らす、休みを取らせる、在宅など自由な働き方を導入する……といった表面的な「働き方改革」だけでは行き詰まるのかもしれない。

 もう昔のように処遇できない。成果出さない人にはポストも金もあげられない。働かないオジサンは500万円。足りなければ副業してよ。それが嫌なら辞めてくれ。こういったことをはっきり明示することが、ニッポンの大企業改革の原点だ――Aさんの語るこの「劇薬」を、大企業と働かないオジサンたちはのみ込むことができるだろうか。

  
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