世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月7日

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 第三の大きな政治的問題は、経済的緊張が東アジア、東南アジアの近隣国への中国の行動にどう影響するか、である。これが懸念すべき最大のものである。最悪なのは、経済的緊張への対応として、中国政府あるいは軍がナショナリズムを煽り、東シナ海・南シナ海において、日本、ベトナム、フィリピンその他の国々との領域紛争をエスカレートさせることである。そういうことが起きれば、株式市場の崩壊など空騒ぎにしか見えなくなるだろう、と述べています。

出典:Bill Emmott,‘We should worry about China’s politics not the economics’(Financial Times, August 28, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/b14c5de2-4bd0-11e5-b558-8a9722977189.html?siteedition=intl#axzz3k80BQ27d

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 エモットは、最近の中国の株式市場のバブル崩壊が提起する政治的問題として、1)これまでの投資主導の経済からの移行がうまくいっていない、2)株の暴落で損失を被った投資家の怒りに、失業率の増大等が加わって、指導者の恐れる大衆の反発が起きる可能性がある、3)国内の経済的不安への対応として、中国政府、あるいは軍が東、南シナ海での紛争をエスカレートさせる恐れがある、ことの3つを挙げています。

 1)は以前から指摘されていることであり、国有企業等既得権益者の抵抗、汚職追放運動で、多くがイニシアチブを取ることを恐れていることなどのため、改革が進まないと言われています。経済の基本的構造改革は、いつどの国にとっても容易ではありませんが、この改革は中国経済の持続的発展に不可欠であり、中国政府は多くの難問を抱えつつも、今後ともその実現に努力していくでしょう。

 2)について、中国政府が大衆の反発を恐れているのは、その通りです。一時期から反日デモが行われなくなったのは、反日デモが反政府デモに転嫁することを恐れた中国政府が押さえたためです。ただ今回の株価の暴落に際して、これまで損失を被った個人株主が大挙抗議したとの報道はありません。中国では株主の8割は個人で、昨年の株価の急騰に際して、金を借りてまで株を買った者が多数いるといいます。今回の暴落で被った痛手は少なくないと考えられますが、今のところそれが大衆の怒りにまでは発展していません。ただ、大きな損失を被った個人投資家の今後の動向から目を離せないというのは事実でしょう。

 3)の国内の問題から目をそらせるために対外的緊張を作り出すというのは、古典的対応であり、中国が内政で行き詰まった時、攻撃的な対外政策を推進するのではないかとの恐れはこれまでも論じられてきました。その恐れは常にありますが、今回の株価の暴落を契機として、中国が東、南シナ海での紛争をエスカレートするというのは言い過ぎでしょう。上記2)にいう大衆の反発が大規模に起きるようであればエスカレートの可能性は考えられますが、そのような反発は起こりそうにありません。

 攻撃的な対外政策の推進は当然のことながらリスクを伴います。よほど国内的に行き詰まらない限り、そのような行動は起こさないでしょう。ただ南シナ海、東シナ海の緊張は、中国当局の意図とは別に、何らかのきっかけでエスカレートする危険があります。中国と日本、その他の関係国はそのような危険の防止のための、平時の意思疎通の手段などを講じるよう努めるべきでしょう。

  
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