イノベーションの風を読む

2015年9月30日

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 それまでのビデオカメラが、特に利用シーンを特定しない汎用機であったのに対し、GoProは激しいスポーツシーンでの利用に特化した。ビデオカメラが、スマートフォンのアプリやデジタルカメラの一機能に代替されて、そのハードウェアとしての存在意義がなくなってしまっても、GoProはそれらでは代替されることはなかった。GoProはハードウェアでなければならない理由が明確だった。

 デジタル一眼レフカメラもハードウェアでなければならない理由がある。しかしカメラメーカーは、その価値を製品やマーケティングに反映して、市場に明確に伝えることができていない。その隙に、アップルは「iPhone6で撮影」というテレビCFやポスターによるキャンペーンによって、カメラがハードウェアでなければならない理由をなきものにしようとしている。 

次の変化の場所
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 かつてハードウェアであることがあたり前であったものが、スマートフォンのアプリになってしまったもう一つの理由として、それがクラウドにつながっていないということがあげられる。

 音楽はCDという物理的なメディアで購入するものではなく、インターネットで購入してパソコンやスマートフォンにダウンロードするものになった。そして、音楽は購入して所有するものではなくなりつつある。Apple Musicが開始されて、音楽のストリーミングサービスが急増した。

 もはや音楽をスマートフォンに保存する必要はない。膨大な量の音楽を管理して検索して選択するためのユーザーインターフェースも必要なくなる。音楽は、ヘッドホンのようなハードウェアでなければならない端末に、直接ストリーミングされれば良いはずだ。

 その端末には、ストリーミングサービスが提供するキュレーションやレコメンドの機能などとのコミュニケーション・インターフェースが必要になる。それは例えば、今年のGoogle I/Oで発表されたSoliプロジェクトのような指先のちょっとしたジェスチャーと、デバイスからの音のフィードバックを組み合わせれば実現できるだろう。

 スマホでないものを、それがハードウェアでなければならない理由を明確にし、そしてクラウドにつなげて関連する情報やコンテンツをクラウドと交換する。人々が常に携帯しているスクリーンを備えたスマートフォンで、そのハードウェアや情報をコントロールすることができるようになる。スマホエコノミーの顧客に、これまでになかった新しい体験を提供できる環境が整ってきたのではないだろうか。

  
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