カラはわざと通り魔殺人事件に巻き込まれて、犯人の人質になってまでして、夕貴を試す。夕貴は、カラに身代わりになって人質になることを犯人に告げる。そして、犯人が刃物をカラにふるった一瞬、手首を抑えて逮捕のきっかけをつくる。
サイコパスの心理は測りがたい。カラは夕貴のような正義感にあふれた行動をとることを誓う。そして、秘密クラブの経営者である整形外科医の月本(要潤)を殺害し、たまたま現場の部屋に戻ってきた少女も殺してしまう。
「ひとり、多く殺してしまった」と、カラはつぶやく。
連続殺人事件が、カラによって淡々と進行していく様は恐怖感を高めていく。ドラマのなかで、これほどまで殺人を繰り返す悪女があっただろうか。
日常のなかで、普通の生活を送っているかのようにみえる女性が、実はサイコパスである設定の映画はある。堀北真希が主演の「白夜行」(深川栄洋監督・2011年)は、主人公が殺人犯に至る過去を明らかにしていった。
カラの過去にはいったい何があったのだろう。整形外科の月本がカラのほほをなでながら、「どうみても20代にしかみえない」とつぶやいた謎は。
「サイレーン」はテレビドラマの刑事モノの装いをまとっているが、上質のサスペンスに仕上がっていると思う。
里見(松坂)の捜査に口をはさむ桜中央署の刑事課長・安藤実役の船越英一郎や、夕貴と血はつながっていないが父親・文一役の大杉漣ら、脇役陣が松坂桃李と木村文乃、そして菜々緒の演技を支えている。
本作は、女優としての菜々緒の地位を固めることになりそうだ。
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