受け入れてくれる場所がある
その後もやり取りを続け、年末の忘年会でリアルに対面すると、「皆さん、メールでやり取りをしていた以上に優しくて、魅力的で、以来、会社に勤めながら、ほぼ毎月、県に通うようになりました」
多恵さんにとって、初めての「地方」とのつながりだった。
東京生まれの多恵さんには、それまで「田舎」というものがなかったのだ。
しかし、逆に言えば、東京は、多恵さんにとってはまさに「地元」であるはずだ。
ならば、その地元・東京で、“つながり”を感じることはなかったのだろうか?
東京は“地元”にならない?
「そうですね。東京生まれと言っても、小さいときに生まれた町からは引っ越してますし、働き出してからは、姉と池袋に住んでましたから、隣に住んでいる人の顔もまったく知らなかったんです。だから、そこが自分の“居場所”という感覚はなかったし、“いつか出ていく場所”だとずっと思ってました」
東京で、一人で暮らす女性なら、うなづける感覚だ思う。
ここではない、“どこか”。
そして、今ではない、“いつか”。
……いつかきっと、“ちゃんとした暮らし”を送る日が、自分にもやって来る。
だけどそれは、どこにあるのだろうか?