■今回の一冊■
THE LOST SYMBOL 筆者Dan Brown, 出版社Doubleday, $29.95
あの世界的なベストセラー小説「ダ・ヴィンチ・コード」の続編がようやく出た。「ダ・ヴィンチ・コード」ではルーブル美術館などフランスを舞台に活躍した主人公のロバート・ラングドン教授が、本書ではアメリカの首都ワシントンDCでさまざまな謎解きに挑む。
2003年春に出版した前作「ダ・ヴィンチ・コード」はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストの単行本フィクション部門で144週にわたってランクイン。うち54週はリストのトップに君臨したおばけベストセラーだ。
そのシリーズ最新作ということもあり、初版はいきなり500万部を印刷。ウェブ版9月25日付のベストセラーリストにトップで初登場、今のところ3週連続で最高位を維持している。
首都ワシントンの隠された歴史
本書のタイトルは直訳すると「失われたシンボル」。これまでのシリーズ作「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」と同様、宗教図像学(シンボル学)を専門とするハーバード大学のラングドン教授が、宗教や秘密結社に関する薀蓄を披露しながら謎を解き、ストーリーがテンポよく進む。
本書では、謎の狂信的な男に捕らわれの身となっている恩師ピーター・ソロモンを救い出すため、フリーメーソンの秘密のピラミッドに秘められた暗号の解読に挑む。暗号を解けば、古代から封印されてきた秘密の場所の入り口が分かるというのだ。しかも、12時間以内に解読しなければ恩師の命はない。スリルを盛り上げるための無理な設定への批判もあるだろうが、そこは娯楽作品と割り切れば、ワシントンDCを巡るトリビアの数々には興味を覚えずにはいられない。
歴史と文化の大陸であるヨーロッパを舞台としてきたこれまでの作品に比べ、歴史の浅いワシントンDCが舞台では素材の魅力に欠けるのではないかという心配はご無用。作中ではわざわざラングドン教授に、アメリカの首都よりもヨーロッパ旅行に行きたがる学生を相手に次のように語らせている。