世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月12日

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両グループ合流の可能性

 Hassan Hassan(Isis: Inside the Army of Terrorの共著者)は、ISISとアルカイダは競争し成長している、と言っている。

 あるテロの専門家によれば、アルカイダの分派は、アフガン、パキスタン、東南アジアだけでなく、マグレブ、サヘル、ホーン岬、イエメンにおいていまだに強力である。他方、ISISはレバント、リビア、西アフリカ、コーカサスでより優勢である。

 ISISとアルカイダはイデオロギーをめぐっては争っていない。相違点は、戦略と戦術、そして大部分がリーダーシップについてである。専門家はバグダディかザワヒリのいずれかが消えれば両グループは再び合体し得る、と予測する。

 今日のテロ情勢は第一に、あらゆる異なったプレイヤーが関与しており、第二に、アラブの春により生じた地域的真空がグループに活動領域を与えている、と元FBI特殊エージェントのAli Soufanは指摘する。

 テロ情勢はますます複雑化し得る。自称国家を防衛するため、ISISはますます危険なものになろう。他方、アルカイダは、地域的な同盟者を作り、破壊するのがより困難になろう。双方とも、テロを通じて力を拡大することを狙うであろう、と分析しています。

出典:Roula Khalaf,‘The deadly contest between Isis and al-Qaeda’(Financial Times, December 2, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/2/297def12-9819-11e5-95c7-d47aa298f769.html#axzz3tMQosZoj

*   *   *

両組織念頭に置いた対策を

 ISISはイラクのアルカイダを母体として成長した組織です。したがってアルカイダと似た思想を持っています。しかし、目的が今は異なっています。
ISISはカリフ制国家を樹立し、それを強靭なものにしようとしています。他方、アルカイダはカリフ制国家建設の問題はさておいて、イスラム世界への西側の「侵略」を排撃することが最重要課題であり、それができれば、中東の腐敗した現政権は崩壊するという、いわば国際主義的な考え方をしています。この違いをイデオロギーの違いとみるか、戦術の違いとみるかは、どちらも可能です。一国社会主義のスターリンと世界革命推進を主張したトロツキーの違いをどう考えるのか、というのとよく似た問題と言えます。

 論説は、ISISのアルバグダディかアルカイダのザワヒリがいなくなれば、両者は合同しうるという見方を紹介していますが、「バクダディは残虐過ぎる」とのザワヒリによる批判、それに対する「私はザワヒリに従うより神に従う」とのバグダディの反論はそれぞれの組織に浸透しており、両組織の考え方の相違に鑑み、そう簡単に合併しないと思います。

 テロ対策の立案という点では、ISISもアルカイダも念頭に置いておく必要があり、二つの組織への対応は対策立案を複雑にすることは否めません。その上、ISISは海外活動にはそれほど力を入れていませんでしたが、軍事的圧力への反応として米欧諸国およびロシアを攻撃することに今後力を入れてくるでしょう。ISISにもアルカイダとその分派にも気を付ける必要があります。
なお、サミットやオリンピックを控え、日本国内のモスクでの過激な説教を探知する方策を考える必要があります。

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