2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月4日

 NATOのストルテンベルグ事務局長が「欧州安保の規則を近代化する」との論説を欧州の主要各紙に寄せ、ロシアと話し合い、軍事活動の透明性を高める措置に合意すべきである、と論じています。

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安定性減退する欧州

 すなわち、欧州の安全保障の予測可能性、安定性が減っている。今週、NATOはトルコによるロシア機撃墜について緊急会合を開催した。私(ストルテンベルグ)はトルコとロシアのさらなる接触を歓迎する。将来、こういう事件を避けるためのメカニズムを強化する必要がある。

 ここ2~3年、我々はロシアの軍事活動の増加と政治目的のための武力の使用を見てきた。2014年2月、ロシアはウクライナ国境に近い西部軍管区で演習(3万8千の兵士参加)を行い、その多くがウクライナの領土、クリミアの奪取に参加した。

 予測不可能性の増大に対応し、NATOは防衛措置を取っている。しかし欧州の長期的安定のためには、欧州安保に関する規則の近代化がいる。ロシアの軍事活動は活発になっている。ここ3年で、ロシアは18回の演習をした。15万以上の兵士が参加したもの、核攻撃シミュレーションもあった。海空軍活動も増え、隣国の反応を試すようなものもあった。

 軍事訓練・演習はあらゆる国家の権利である。NATOも演習をする。10月、我々は3万6千の兵士が参加する演習をポルトガル、スペイン、イタリアで行なった。しかしロシアと違い、演習スケジュールを公表し、ロシアを含む国からオブザーバーを招請している。ロシアの計算された予見不可能性と透明性欠如とは全く逆である。欧州における軍事活動を律するレジームは、もはやその核心的目的、すなわち透明性と予測可能性をもたらしていない。ロシアを含む欧州安保・協力機構(OSCE)加盟国は演習の査察と通知を含む規則に合意している。しかしウクライナ、グルジア、モルドバでのロシアの行動はこれらの規則に反している。

 これは新しい冷戦ではない。しかし警鐘ではある。

 欧州安保に関する規則を、現実を反映するように近代化し、ロシアと再関与する必要がある。突然の演習への突然の査察、演習の通報へのより低い敷居、軍事活動の透明性、海空での事故や事件を管理する共通の規則が必要である。NATOは規則を守り続ける。しかしOSCEの枠内で新たな規則、レジームを交渉することが必要である。我々がもっと透明なレジームを作らないと、誤算、事故、軍事対決の危険がある。同盟国を確固として防衛することと軍事活動についての透明性の追求は同時に行われるべきである。軍事活動への透明化など欧州安保の規則を強化することなしに欧州の安定はない、と論じています。

出典:Jens Stoltenberg,‘Modernising the rule-book of European security’(NATO, November 26, 2015)
http://www.nato.int/cps/en/natohq/opinions_125177.htm

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