2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月4日

ロシアは周辺国との信頼醸成措置を

 この論説は良い提案をしていると思います。ただ、ロシアがこの提案にすんなり応じるか否かは分かりません。

 冷戦中、欧州においては、種々の信頼醸成措置が行われていました。信頼醸成措置というのは相互に不信がある時に、行われるものです。相互信頼があれば、信頼醸成措置はいりません。たとえば英仏間では信頼醸成措置など不要です。ソ連とNATOの間には不信があったが故に、信頼醸成措置は必要でした。たとえば兵士が大勢集められた時に、それが攻撃のためではなく、演習のためであることを示すために演習に相手側のオブザーバーを招く、などといったことが典型的な信頼醸成措置です。攻撃してくるのではないかとの不信を払拭するのが目的でした。

 最近では、NATO、欧州諸国とロシアの間で不信が大きくなっています。この状況に鑑み、信頼醸成措置、軍事活動の透明性を高める必要があるというのはその通りでしょう。

 ただ、ロシアのウクライナ侵攻、グルジアやモルドバ侵攻は信頼醸成措置で未然に防げるようなことではありません。ロシアは何かを誤解して侵攻したと言うより、クリミア奪取、南オセチアとアブハジアのグルジアよりの分離を明確に狙って侵攻したのです。ここで問題なのはロシアの意図であって、誤算が問題になる余地はありません。こういうことも信頼醸成措置で防げるという幻想は持つべきではありません。

 他方、シリアでは各国軍が入り乱れており、意図せざる衝突、事故があり得ます。飛行経路のあらかじめの相互通報、衝突防止手続きなどの合意は有益でしょう。

 ロシア機はトルコの領空を侵犯したので撃墜されました。領空侵犯した場合、強制着陸させるのが普通で、数回の警告後、いきなり撃墜するというのは少し乱暴に過ぎます。旧ソ連並です。ただ、プーチンが領空侵犯で撃墜されたのに、撃墜はISからトルコへの石油密輸ルートを守るためであったなど証拠も提示せず、非難しているのは感心しません。プーチンは、陰謀説好きで問題を捻じ曲げる癖があることを、自ら全世界に披露しているようなものです。

  
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