幼児期の子どもの教育は、まず原則的な行動を身につけさせ、成長に応じて行動の意味を知的に理解させていくというステップを地道に踏んでいく。この着実な積み上げによって、子どもたちは「排泄の自立」を獲得し、さらにその結果として健康管理への興味が高まり、「自分の健康は自分で管理するもの」という意識が定着していくという。
実際に、風の谷幼稚園では朝型の排便を積極的に指導し、5歳児クラスではほとんどの子どもが自分の意思でその習慣を獲得している。
「前の日に食べたものは朝出して、体を軽くして1日をスタートさせるわけです。これは『食べたら出してスタート』という生活のリズムをつくるということでもあります。自分の経験上、この習慣が定着すると、子どもが体調を崩すことはなくなっていくという実感があります」(天野園長)
もちろん、「排泄の自立」は、「子どもの意識を散漫にさせない」という観点からも大切だ。
「大人でも便秘をしていたり朝の排便をしていないと、おなかが気になって目の前のことに集中できないことがあります。特に子どもはおしっこやウンチには敏感に反応します。つまり、排泄のことが気になると、活動において注意力が散漫になり、集中できなくなるのです」(天野園長)
確かに子ども時代を思い返してみると「排便が気になって日中の授業や課外活動にまったく身が入らなかった」そんな思い出がある人も多いのではないだろうか。
風の谷では紙パンツは使わない
その理由とは?
また、「排泄の自立」について、風の谷幼稚園が重視しているのは「おねしょをしない子どもを育てる」ということだ。これは親向けの勉強会や合宿などを通じて指導をおこなっているが、このテーマについても実に多くの教育的観点がある。
まず、その第一は前述通り、「おしっこはトイレでするもの」という意識を持たせることで、自分の身体をコントロールする力を身に付けさせるということだ。そして、これを確実なものにするために、風の谷幼稚園では寝るときに紙パンツは使わないよう親に指導しているという。これはいったいどういう理由なのか?
「まず、子どもは『おねしょをしちゃいけない』ってことはわかっています。でも出ちゃうんですね。そこで、大人が自分自身のあり方も含めて『なぜ、おねしょをするのか?』『おねしょをしないためにはどうしたらいいのか?』を考えてやることが大切です」(天野園長)
子どもを育てる大人は、誰もが「子どもにおねしょをさせたくない」とうい気持ちを持っている。しかし、その気持ちには二通りの意味があるという。
「その子どもの身体の機能を発達させて、おねしょをしないようにしてあげよう」
「おねしょをされると自分が面倒くさいから、おねしょをさせないようにしよう」
どちらかの気持ちだけのこともあれば、両方の気持ちが入り混じることもあるだろう。後者の気持ちが強くなると、子どもが不快感を覚えず夜中に起きなくて済む「紙パンツをはかせる」という結論になりやすい。しかし、ここで考えなくてはならないことがある。