科学で斬るスポーツ

2016年1月30日

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科学的データ分析も大きく貢献

 試合分析に基づく、戦略、戦術、トレーニングも大きかった。データ分析を担ったスポーツアナリストが中島正太さんだ。2012年のエディーHC就任とともに担当になった。

図4 南ア戦の準備について語る中島正太さん

 「南ア戦になぜ、日本代表が勝てたのか。それは世界で最も準備されたチームが日本だったからだ」。中島さんは、昨年12月、都内で開かれたシンポジウムで、南ア戦勝利の舞台裏を明らかにした。

 チームの合言葉は「Beat the Boks」(ビート・ザ・ボックス、南アを倒せ)。南アの試合ビデオを分析し、何が強みで、どこに弱点があるか、日本代表につけいるスキはあるのか、数値化した。本当に勝ちに行っていたことが伺える。この数値は、各担当のコーチに共有され、大いに活用された。

 日本代表が世界に勝つアタッキング・ラグビーを実現するためにエディーは、Japan Wayとして、

 ①シェイプ(常にパスワークが繋げられるよう、連携した攻撃で相手守備網を崩す陣形)

 ②セットプレーとアタックの相互関係

 ③スマートプレー(頭を使った賢いプレー)

 ④リロード(タックルなどで倒れた後、素早く立ち上がり次のプレーに移る

 ことを挙げている。簡単に言えば、選手個々が役割を自覚した全員ラグビーの徹底だ。

 そして南ア戦に向け、多くの対策を考えた。

 その1例が、W杯に向け、リロードを「3秒」以内を徹底したことがある。つまり、倒れている選手をできるだけ少なくし、全員が防御や攻撃に当たることを増やした。常にシェイプによる、粘り強いパスワークパスワークをつなげるためだ。下の図を見て欲しい。ラックやモールで倒れた選手がすぐに起き上がり、図のようにシェイプに加わっていく。大事なのは、相手がディフェンスの体制を整える前の速めの展開。しかも最低でもパスの選択肢を3つ以上もっていくことである。こうすることで、相手のディフェンスの人数が、こちらの攻撃を上回るような1対2、1対3になることが回避できる。ロングパスではなく、近くのパスで早め早めにつなげていく。何度も何度も攻撃をしかけていくことで、相手にスキが生まれる。これもJapan Wayの一つだ。

 3秒以内のリロードを達成するため、選手1人1人の時間を測定し、ランキングを発表した。その結果、2014年のリロード達成率は1試合平均65%(最大74%)が、15年には73%(最大値84%)まで向上したという。

 もう一つは、従来の日本のイメージを打ち破るサプライズ作戦だ。予想と異なることを仕掛ける、相手の裏をかくことで、余裕を奪い、主導権を握る狙いがある。

 2012年〜14年までの日本代表の1試合平均のパスは、160回、キックは16回と、パスとキックの比率は10対1だった。南ア戦では、キックを増やした。パス125回、キックは22回と6対1。こうした作戦が相手のミスを誘った。

 さらに南アはラインアウトが強み。得点の50%以上はラインアウトからの展開。早いテンポで試合を展開し、なるべくラインアウトに持ち込まないようにした。

 小田教授は、「日本は南ア戦で前半、後半(各40分)の最初の20分は、基本的にペナルティーゴール(PG)キックで、着実に点を重ねた。五郎丸歩の精度の高いキックもこうした試合の流れを手繰り寄せるのに有効だった。そして、相手の焦りを誘い、消耗させ、後半20分の追い込みにつながった」と指摘する。

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