レフリーの癖も研究
日本の準備はこれだけにとどまらない。レフリーの研究にも力を注いだ。南ア戦でレフリーを務めることになったジェローム・ガルセス(フランス人)には、W杯直前の昨年8月、宮崎合宿に招聘し、練習試合で笛を吹いてもらった。レフリーの癖はスクラムに特に現れる。日本の低いスクラムがレフリーに反則をとられるかをみる機会だったが、ガルセス氏は、スクラムの反則をとらなかった。「日本のスクラムは弱くない。大丈夫」という自信は本番にも大きく生かされた。もちろんこうしたレフリーを招待できるのも、世界のラグビーに名が知られているエディーHCの貢献は大きい。
本番会場となった英国のブライトンにも4月に足を運んだ。芝生が深く、長めのスパイクのシューズが合うことなどもつかんだ。食事は炊飯器を持ち込み、さらには主将のマイケル・リーチの発案で、自分のポジションと相対する選手の特徴を事前に頭に叩き込んだ。「ボールを運ぶと強いが、タックルを受けると適当にパスする」など分析結果も活用した。選手らは「相手を知ると、強みになった」と語っている。
南ア戦の勝利はこうした世界一の準備の上で、成し遂げられたものだ。選手たちが、最終盤、相手ミスでPGかスクラムを選ぶときに、「誰も(同点)PGを狙おうという選手はいなかった」(リーチ主将)というように、選手らの心の中には、「練習通りにやれば勝てる」という共通の認識が広がっていた。
「今回の日本代表は、勝利にしがみついてもぎ取ったのではない。事前の準備段階で、すでに南アに勝っていた。体と心の中では勝っていた。だからスクラムを選び、逆転サヨナラトライとなった。これは本当に選手からみれば練習通り以外の何物でもないのです」と小田教授は、日本代表の強さをこう指摘する。
エディー氏に代わる日本代表のHCが、ジェイミー・ジョセフ氏にほぼ決まった。ジョセフ氏は、世界最高峰ラグビー、スーパーラグビー「ハイランダーズ」を率いている。日本のサニックスでプレーした経験もあるなど知日派。エディーが持ち込んだ新たな新風を継承するには、外国人の方がいいと思っていただけに、ジョセフ氏のHC就任を歓迎したい。ただ、エディイズムとどう歯車を合わせるか、課題も多いが、2019年の次期W杯日本大会に向け、準備の大切さ、考えることを学んだ選手が半数以上残るとみられるだけに、今後どう進化していくか、とても楽しみだ。
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