人と人とのつながりを大切に
小児がん患者を支援するNPO「ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ」では夫婦で理事を務めていたり、児童養護施設の子どもたちと交流を行っていたり、東日本大震災の後には、福島県いわき市を毎年訪れていたりと、今江選手の活動は、年々広がっている。そして、今江選手の活動がユニークなのは、全て自ら関わりを始めているところである。
「どの活動も、全部自分発信なんです。母がガンでなくなり、闘病生活を見ていました。未来のある子ども達が同じように苦しい思いをしているのを知り、小児ガン患者の支援を始めました。千葉の養護学校は、子どもが生まれてから、子どもへの愛情とか、自分が愛情をかけて育ててもらったことを実感して。親のいない子ども達の力になれたら、という思いで始めました。そして、いつもこういう福祉活動を手伝ってくれたスタッフが、福島県いわき市の出身で。震災後、少しでも力になれればと思って、いわきへ行きました」
福島県いわき市への訪問は、震災の起きた2011年から始め、今年で5回目となった。市役所や小学校、中学校を訪れ、夜には野球教室も実施した。小学生の頃から交流している生徒がいる磐崎中学校では、トークイベントを実施。質疑応答や野球部とソフトボール部の生徒への素振り指導も行った。生徒からは、「今江選手が行っている社会貢献活動に興味を持った」「今江選手の優しさ、温かさを感じた」と、小学生時代から知っているプロ野球選手に親しみも感じていた模様。野球部の顧問でもある鈴木哲先生は「震災以来多くの有名人が被災地を訪問している中、5年も継続して活動していることが素晴らしいことだと改めて感動しました。子どもたちに笑顔で接していただいたので、生徒たちは安心して緊張せずに過ごせたと思います」と話した。
「どの活動でもそうなのですが、交流して刺激し合って、切磋琢磨して。距離感があるのはいやなので、自ら訪れてやっています。やっぱり、人と人とのつながりが一番大切だと思います。自分が著名だからと上からではなく、同じ位置に立って、同じ目線で交流したい。ホントに気づきながらできているというか、僕の財産になっています」
14年過ごした千葉ロッテマリーンズから、今年、東北楽天ゴールデンイーグルスに移籍した今江選手。移籍の交渉では、星野仙一副会長から、社会福祉活動を評価され、人間性も含めて若手のリーダーになってほしいと言われたという。今江選手は、「一人のプレイヤーとして、そして人間としても評価してもらっての移籍になりました。福祉活動をすると、見えてくるものも違うんで、後輩に興味を持ってもらえたら、社会もよくなっていくと思います。人間としてもいい具合に影響できたらいいですね。東北は、震災があって、まだまだ復興が大変なんで、そういう意味でも東北の人に喜んでもらえる、元気を出してもらえるプレーをしたいと思っています」
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