2024年4月20日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2016年5月22日

 さらに「ニュース報道では共産党からの指導によりメディアが事実を正確に報道できないケースが多いと聞いているけど。中央電視台でニュース原稿を書いていると政治的指導により記事を修正することもあるんじゃない」とやんわりと聞くと、「それは誤解ですよ。もちろん関係部署や上司から原稿に関して修正意見が出されることがありますが、その場合は原稿で欠けている事実や視点がないか再検討します。偏った部分だけを取り出してセンセーショナルに報道することは危険です。民衆を扇動するような報道にならないよう心がけています。むしろ欧米諸国ではジャーナリズムが商業主義に走りセンセーショナルな報道に偏る傾向があるのではないですか」とあくまで彼の信じる正論を私が納得できるようにソフトに論理的に語る。

 ジャーナリズム学科で学んだ「公正な報道」「公益を守る」「正しい報道姿勢」の定義も西側のそれとは異なるのであろう。

 そもそも大学でジャーナリズム学科を出て国営TV中央電視台の北京にポジションを得るのはほんの一握りの超エリートである。一流大学で学生時代に共産党に入党して頭角を現して中央電視台の党組織の上層部に認められなければ北京での職位は得られないと聞いている。

 しかし彼と話している限り、肩ひじ張った筋金入りの共産党員というイメージからはかけ離れており、明るく健全な好青年という印象だ。私は2013年に退職するまで数十年間幾多の中国国営企業幹部(当然共産党員である)と交流した経験があるが概して若くして出世の階段を駆け上がってゆくのは彼のような明るく魅力的な人物が多い。

 このような優秀な好青年が学生時代から切磋琢磨しながら競争し、時には権謀術数を用いてライバルを蹴落として党員数8000万人ともいわれる人類史上最大の権力機構の階段を上ってゆく。40年近く激烈な生存競争に揉まれてトップに登りつめた指導者はまさに鍛え抜かれた“つわもの”の頂点である。

 このような地球上最大の権力機構のトップと日本の政治家や官僚は互角に渡り合えるのだろうかと心配になった。

ルアンバパンの滝

 ⇒第14回に続く

  
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