2024年4月26日(金)

イノベーションの風を読む

2016年2月17日

「モノのツィッター」というビジネスモデル

 「さくらのIoT Platform」の発想は「モノがつぶやけばいいのに……」という会話がきっかけで生まれたという。ツィッター上の人々の膨大なつぶやきを解析することによって、様々な事業者にとって価値のある情報を得ることができるようになったように、IoT時代には「モノのつぶやき」が価値を生むのではないかという。

 「さくらのIoT Platform」のクラウドには、モノから送られたつぶやき(データ)がタイムラインに蓄積される。IoT事業者がデータをパブリックにすれば、別の事業者(データ利用者)がAPIを使用して、そのデータが蓄積されたタイムラインにアクセスしてデータを利用することができる。

 パブリックデータへのアクセス(筆者作成)
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 「さくらのIoT Platform」の課金モデルは、まだ固まっていないようだ。通信モジュールや通信自体への課金はせずに、IoTデバイスとクラウドで送受信されるデータに対してMessageという単位で課金されるという。さらにIoT事業者やデータ利用者が、インターネット経由でAPIを利用してデータにアクセスする場合も課金される。つぶやきが価値を生むのであれば、その価値にアクセスするデータ利用者が対価を払うというのが「モノのツィッター」が目指すビジネスモデルだろう。さくらインターネットの社内でも、その価値を生むモノのつぶやき、すなわちMessageに課金するのはおかしいのではないかという議論もされているという。

 ツィッターなどのソーシャルネットサービスを立ち上げようとするとき、最初は収益を無視して投資を行い、ひたすらユーザの獲得に集中できる。ユーザとそのトラフィックを増やすことさえできれば、広告やユーザが生み出すコンテンツでのビジネスが見えてくる。「モノのツィッター」では、つぶやきを生み出すモノをどのように増やすかということが最大の課題になる。

 モノのインターネットは、M2Mと呼ばれる分野が先行している。M2Mとは「マシン・ツー・マシン」の略で、モノとモノがネットワークに繋がり、人手を介さずに情報交換を行い、自動的に制御を行う仕組みを指している。これは物流やエネルギー、リモート監視・計測などの産業分野ですでに広く実用化されているテレメタリングと呼ばれるものと同じ概念だが、特に無線通信やクラウドなどのインフラの発達によって、そのユースケースが拡大し、IoT/M2Mなどと表現されるようになった。

 「モノのツィッター」のビジネスモデルの一つとして、テレメタリングで収集し自らが使用するデータを再販するというパターンが考えられる。このパターンではIoT事業者にはリスクがない。「さくらのIoT Platform」を利用することによって、新規にテレメタリングを始めることも非常に容易になる。「さくらのIoT Platform」を利用して、初めからデータの収集と販売をビジネスにしようとするスタートアップも現れるに違いない。

 すでにテレメタリングのデバイスとシステムを持っている事業者が「さくらのIoT Platform」のマーケットにデータを提供できるようにすることや、データの利用者が利用価値を理解できるようにデータを商品化することが必要になる。別の種類のモノのつぶやきを同じタイムラインに蓄積したり、別の IoT事業者のモノのつぶやきを同じタイムラインに並べたりすることもデータの商品化の作業になる。

【ビジネスモデル】
期待度 ☆☆
達成度 ☆☆


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