激しく変わりゆく社会を子どもや若者がたくましく生き抜いていく力を育てるということは、いつの時代にあっても大切な課題です。ところが、精神的・体力的にも弱く、不登校やひきこもり、いじめといった問題を抱えて苦しむ子どもや若者が増え、そのことで多くの親・家族も翻弄され、本当の幸せが何であるのかを見失っている姿が目立つようになっています。
80年以上もの歴史を持つ寄宿生活塾「はじめ塾」は、様々な子どもたちが“したたかに”かつ“しなやかに”生きる力を身につける場となり、親たちにとっても、生き方を見つめ直し自分らしさを取り戻す場になっています。
前編に引き続き、父母の方々の話し合いから、はじめ塾との関わりによって彼らの糧になったものを感じていただきたいと思います。
子供も父母も学べる場
高橋さん:「父母の会」や「講座」は、子どもたちや父母が座学を通じて学ぶ場で、はじめ塾の特徴の一つです。そこでは、初代塾長である重正先生の、体験に裏づけられた精神を学びます。また、二代目塾長の重宏先生や、現塾長の正宏先生とともに、参加者同士で意見を交換しあいながら気づきを得ていく場でもあります。
寄宿生活や合宿は、実際の生活を通じて学びを深めていく場です。様々な立場の子どもたちが共に生活しながら、行動力や判断力、自立心を養うことを目的としています。例えば合宿中の食事の用意では、お当番になった子どもを中心にして、数人の中高生だけで、時には100人近い参加者の食事を毎日3食整えます。限られた材料で、下準備や調理にかかる時間を見通して作り上げていきます。栄養や朝昼晩のバランス、季節感や彩り、食べやすさなども考えた献立は、いずれも美味しく、心と体が満たされるメニューです。調理に関わる子どもたちは、それぞれが主体的に役割を果たし、臨機応変に行動しています。
ところが、合宿所の台所に、大人である自分も何か手伝おうと思っていざ一緒に立ってみると、その場にふさわしい立ち居振る舞いができないこともあります。子どもを産み育てて何年も母親をやってきた自分が、何をやったら良いのか分からないのです。子どもたちの邪魔をしたり、足手まといになっていても気づかないこともありました。そういう時には、とにかく現場で、先輩お母さんや子どもたちの動き方を見て学んでいき、はじめ塾が重きを置いている「生活」の価値、現場主義の意味を理解するようになりました。
座学での気づきと、実践を通して得られた生活力の両輪のバランスが取れるようになった時に、ようやく私自身の心身の中心軸も整ったと感じました。はじめ塾は、子どもたちにとっても父母にとっても素晴らしい学びの場だと思います。