2024年11月22日(金)

安保激変

2016年2月26日

 中国がウッディ島に地対空ミサイルやレーダーサイトを配備したことが確認された直後の2月23日に米連邦議会の上院軍事委員会で17年度の国防予算について開催された公聴会では、出席したハリー・ハリス太平洋軍司令官が証言の中で「中国は南シナ海を東アジアから第2列島線にかける地域における支配を確立するための戦略的最前線とみなしている」と言い切り、「(中国が南シナ海の施設を軍事化していないと考えるのは)地球が平らだと信じているようなもの」とも発言し話題を呼んだ。

米中外相会談前に異例の公聴会

 注目すべきは、この公聴会が開催されたタイミングと、ハリス司令官の証言の内容だ。この公聴会は23日の午前中、ワシントンで、ジョン・ケリー国務長官が中国の王毅外相と会談する直前に行われた。通常、閣僚級の会談のような重要な外交行事が行われる場合、会談相手の国が関係する政策上の問題が議論される可能性があるような公聴会を開催することは、阿吽の呼吸で議会は控える。たとえ公聴会を開催したとしても、政府側から公聴会に出席する高官は、自分の発言が会談に悪い影響を与えないように一定の配慮をすることが多い。

 しかし、今回は、もともとの目的が「2017年度国防予算に関連してアジア太平洋地域の安全保障情勢について聴取すること」であったとはいえ、米中外相会談がワシントンで行われる直前に、米太平洋軍司令官と在韓米軍司令官が登場する公聴会が予定どおり開催された。しかも、公聴会を主催した上院軍事委員会の委員長は、オバマ政権の対中政策を「弱腰」と厳しく批判しているマケイン上院議員である。公聴会の席上でマケイン上院議員から中国に対して厳しい発言が行われることは十分に予想できた。

 さらに、この公聴会に出席が予定されていたハリス太平洋軍司令官も、中国に対して厳しい見方をしていることで知られており、公聴会の質疑応答の際に中国について質問されれば、彼が中国に批判的な発言をすることも十分に予想できた。ハリス司令官の証言の内容は、少なくともカーター国防長官は事前に承知していたはずで、公聴会前に「米中外相会談当日の公聴会でもあるし、少し配慮できないか」といって、暗にトーンダウンを求めることもできたはずだ。

 しかし、2月23日の公聴会では、委員である議員からも、政府側の出席者であるハリス司令官からも、中国に対する厳しい発言が出ることが十分に予測できたにもかかわらず、公聴会は予定どおり開催され、ハリス司令官の、中国に対する厳しい発言が含まれた証言も、事前に議会に提出された証言の内容から大幅に変更されることなく行われているのである。


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