2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2016年3月16日

 5年前には、原子力発電の操業許可を一時中止し、原子力発電所への融資の政府保証を中止するように、オバマ大統領に書状を出している。今年の3月6日のクリントンとの討論会において、シェールガス・オイルの採掘に利用されるフラッキングを支持しないと明言した。クリントンがフラッキングに条件付きで反対したのに対し、「私の答えは非常に簡単」として答えたものだ。

反原発を主張するサンダース(iStock)

サンダースを意識するクリントン

 クリントンは2008年の大統領選では、原子力はエネルギー問題の解決に必要と述べていたが、今回の選挙戦では何も触れていない。また、以前は二酸化炭素の排出枠取引に賛成し、排出枠のオークションで得た資金を新技術開発投資に充てるとしていたが、排出枠取引についても今回は触れていない。しかし、サンダースが態度を明確にしているいくつかの問題については、クリントンは意見を変えてきている。

 クリントンは当初、キーストーンプロジェクトに関する態度を明確にしていなかった。その理由はクリントンが国務長官として本プロジェクトにかかわったために、ケリー現長官とオバマ大統領が決定すべき事案について意見を述べることは不適切かつ公正ではないということだった。しかし、昨年11月にオバマ大統領が建設承認拒否の決断を下す2カ月前の9月に、気候変動問題に対処するためとして反対を表明している。

 3月6日のサンダースとの討論会では、クリントンは、次の条件がある場合にはフラッキングに反対とした。地域が反対しており、メタンあるいは汚染水が排出され、採掘会社が使用している化学物質の成分を明らかにしない。クリントンはこの条件であれば、多くのフラッキングはできなくなるとした。このクリントンの発言は、シェール推進派は無論のこと、シェール反対の環境派からも非難を浴びることになった。

 フラッキング賛成派は、許可権限の大半は連邦政府ではなく州政府にあることを指摘し、大統領ができることはほとんどなく、クリントンは環境派の歓心を買うため発言したとしている。要は、選挙戦術としての発言ということだ。

 一方、環境派は、クリントンは国務長官として米国のエネルギー自給率をあげるためとしてフラッキングを支持し、ロシアへの依存度を下げたい欧州諸国にもフラッキングを勧めていたことを指摘し、サンダース支持層の票を取り込むための手段と冷たくみている。


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