初瀬 弁護士になって何に一番苦労されていますか?
大胡田 やはり裁判資料が紙に書いてあるということです。読めないのが一番大変です。専属アシスタントを付けてもらって、スキャナーで電子データにしてもらったり、僕が書いたものをチェックしてもらったり、僕の目の代わりをしてくれているのですが、その方がいなければ僕は何もできません。
初瀬 僕が弁護士を諦めたのは、その資料が読めないと思ったからなんです。弁護士の仕事を視覚障害者がやっていることに驚きますし尊敬します。
できないところは誰かに補ってもらう
大胡田 現在、弁護士8年目ですが、確かに目は見えないけれどIT機器を活用して、アシスタントと上手く連携して仕事を進めれば視覚障害者にも無理な仕事ではないという実感があります。就職難ということを考えなければ、視覚障害者でもやりがいのある仕事だと思います。
僕のような「町弁」と呼ばれる一般の方たちを相手にする弁護士は、依頼者とコミュニケーションを取る能力が必要になります。依頼者に寄り添って、気持ちを聞き取っていかなければなりません。それをまとめて裁判所に提出しています。それが基本的な仕事ですから、目が見えないことが絶対的なハンデにはなりません。依頼者とのコミュニケーションとパソコンが使えれば十分に弁護士の仕事を務めることができると思っています。
初瀬 全てを自分でやろうとするから無理があるので、できないところは誰かに補ってもらい、自分は自分にしかできない大切なことに時間を掛けるということですね。
さて、最後になりますが、大胡田さんは視覚障害者のニューリーダーとしても活躍されて、活動が国際的ですが、これからの目標をお聞かせいただけますか。
大胡田 アジアの視覚障害者のフォーラムなどに出席していますが、我々視覚障害者は個人が頑張ることはもちろんですが、ネットワークを作って組織として働き掛けをしなければ国の制度や環境は変わっていきません。僕たちは先人たちが作ってくれたものを引き継いでいますので、これを10年後、20年後の社会のために、もっと良いバトンにして繋いでいきたいと思っています。
大胡田 誠弁護士 (弁護士法人つくし総合法律事務所東京事務所所属)
弁護士登録年 : 2007年(第一東京弁護士会所属)
学歴 : 慶應義塾大学法学部法律学科卒業/同大大学院法務研究科修了
弁護士会会務歴 : 日本弁護士連合会人権擁護委員会
障がいのある人に対する差別を禁止する法律に関する特別部会
第一東京弁護士会労働法制委員会
著書 : 『今日からできる障害者雇用』(弘文堂)
『高年齢者雇用安定法と企業の対応』(共著) 労働調査会
『全盲の僕が弁護士になった理由-あきらめない心の鍛え方』(日経BP社)
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