女子達の“今” 時代の趨勢と呼応した心の叫び
連盟、選手会の双方、またその周辺関係者達は口を堅く閉ざす。この状況にあって、匿名で応じてくれた人物がいる。18歳未満の選手で構成される米女子サッカー代表チーム、「U18」のメンバーをサポートするスポーツエージェントの関係者だ。某氏いわく、
「この争議は男女平等を担保するためのものだと思う。お金や諸待遇の見直しの要求というより、選手個々が自らの立ち位置を示そうと結束した証。その団結の時が、今、となった」
語気が強まった「今」――。女子代表と男子代表は今年始めにカリフォルニア州で親善試合を行なっている。その際の観客動員数には大きな開きが出た。男子の8803人に対し、女子は2万3309人の盛況ぶり。人気で男子代表を凌駕する女子代表。その背中は時代の趨勢にも押され出した。
米女子サッカー代表チームの発足は1985年。96年のアトランタ五輪で女子サッカーが正式競技となってから、米国が金メダルを逃したのは、決勝でノルウェーに屈した00年のシドニー五輪だけ。世界の強豪を抑え、米代表チームは常勝軍団として地歩を固めている。
この間、社会に目を向けると、女性の社会的地位向上を目指す動きが活発化。これと軌を一にして、世界規模で同性婚の合法化の波が生まれ、これまでの社会通念に風穴を開ける時代が訪れている。押し寄せる固定観念打破の激浪――奇しくも、米代表チームを03年から牽引してきた世界ナンバーワンのエースストライカー、アビー・ワンバックは引退を発表した昨年に元チームメイトだった女性との結婚を発表している。
涵養した実力と人気を備えたサッカー女子達。これまでくぐもっていたその地声は、“今”、滑舌よく響く声へと変った。
米女子サッカー界のあるべき改革の方向性を告げる画期の闘争は、かくして始まったのである。