訴訟資料によると、昨年の12月23日にニコラス氏は電子メールで基本合意の不備な点を指摘。60日以内に新労使協定に向けた話し合いと合意がなされなかった場合、選手会側は現行の基本合意を破棄するという旨を伝えた。この動きに、16年までの労使協定を主張する連盟側が提訴に踏み切ったのである。
見えてこない選手会の要求
今回の提訴を詳細に追ってきたいくつかの米メディアは「選手会側の要求そのものはまったく見えない」と口をそろえる。しかし、要求の考拠は見えてくる。
米女子サッカー界の事情に詳しい、スポーツアパレル業界のある人物がつぶやいた。
「これまでの選手会と連盟との関係は悪く言えば慣れ合いだった」
前任者からバトンを受けたニコラス氏からすれば、その体質改善に着手することはごく当たり前のことだった。その真情をニコラス氏は披歴する。
「大きな大会があったり、時間が経過したりした際には労働環境改善への見直しは必ず生じるもので、その議論は常に行われる。連盟側には(就任以来)ずっと基本合意書についての見直しを働きかけてきた。なにも(争議を)今にしたわけではない」
そして、こう付言した。
「連盟側は12月のメールをストライキ断行の威嚇と受け取ったようだが、私としては通常の仕事の一環として(送付)したまでだ」
慣れ合い体質打開の緒がたまたまリオ五輪を前にした時期と重なった、というのが選手会側の見解である。