「庶民コスプレ」と「慰安婦」という
ポピュリズムは通用するか
米国ではビル・ゲイツ氏のように自分の能力で富を築き、巨富になってからも慈善事業をするなど努力を惜しまない人は尊敬と憧れの対象になるという。しかし、韓国では金持ちが尊敬と憧れの対象になるのは極めて珍しい。「何か不正な方法で稼いだのだろう」「親が金持ちだから」のような不信と嫉妬の入りまじった目で見られることが多いからだ。
市場経済体制と資本主義の歴史がまだ浅いせいかもしれないが、金持ちが白い目で見られる韓国では、米国のドナルド・トランプ氏のような巨富が有力な大統領候補になることはほぼ不可能だ。
そのため、今まで政治家たちは選挙シーズンになると市場、大衆飲食店などを回りながら自分の「庶民ぶり」をアピールしてきた。しかし、今回のように自分がどれだけ貧乏なのかを熱く語る例はあまりない。正当な方法で築いた富なら、それが一つの「業績」になるべきだが、逆に貧乏ぶりのアピールで支持を得ようとする歪んだポピュリズムが横行しているのだ。
票を獲得するための善人を演じるのはどの時代、どの国でも見られる風景だが、今年の韓国総選挙には「庶民コスプレ」に加えて、「慰安婦」が登場したのは注目すべきところだ。慰安婦問題に対して声を上げることが国民の支持を得られる、いいイメージを与えるとの確信があったからだろう。
何をアピールするかは候補者の自由だ。しかし、懸念されることがあるとしたら、もし今回の選挙で庶民コスプレや慰安婦の効果が証明されたら、つまり当選という結果につながったら、今後の選挙では間違いなく同じ方法を真似するフォロワー(模倣者)が続出するということだ。「庶民コスプレ」だけならまだ韓国国内の問題に留まるかも知れないが、もし「慰安婦」が選挙で威力を発揮することになると、今後の日韓関係に及ぶ影響も少なくないだろう。
庶民コスプレや慰安婦を用いたポピュリズムが通用するかどうか、後8日で明らかになる。
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