2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月11日

次なるパラダイムは“脅威削減”論

 今や、エンゲージメントの幻想は止め、「脅威削減」論とでも呼ぶべきパラダイムを考えるべきだ。長期戦略を持ち、同盟国等と協力して、しかし米国の一方的な行動により、米国は北の核を阻止し、その危険を下げ、ゆくゆくは除去していくことができる。この考えは、北の通常戦力・戦略攻撃戦力を弱体化しながら北の軍事力に対する防衛力を加速度的に強化していくことを意味する。

 近年削減された米国の戦力の回復が不可欠である。特に高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を韓国、日本へ配備すべきだ。韓国は軍の近代化や市民防衛を進めるべきだ。過去60年に亘って取ってきた非武装地帯での抑制的対応を終了する旨を北に告げ、今後北の挑発には報復が伴うようにすべきだ。アジアでの米国の同盟関係を強化し、日韓の「つまらないケンカ」を修復すべきだ。

制裁に弱い北朝鮮経済

 北の軍事経済の弱体化を図るために、現行のPSIやMTCRなどの不拡散努力を強化すべきだ。韓国は補助金で支援する対北貿易を止めるべきだ。米国は北をテロ支援国家リストに戻し(もともと削除すべきではなかった)、効果的な制裁措置をとるべきだ。北の経済は機能不全で、制裁に弱い。北朝鮮に対する制裁措置は対イラン制裁よりは弱い。ブッシュ政権時代の「非合法活動イニシアチブ」(海外にある北朝鮮口座の追及と凍結)を再導入すべきだ。

 中国の北支援について中国に対価を支払わせるべきだ。国連などで対中外交工作をすべきである。NGOは中国が北の犯罪行為の共犯者になっていることを暴き、人権団体は脱北者支援を通じて中国に恥をかかせることができる。

 北は孤立化を体制維持に利用している。北は外国メディアや国際的情報、文化交流などを恐れている。これらの活動を拡大すべきだ。北朝鮮人の技術訓練等も考えるべきだ。

 そして、半島統一に備えるべきだ。北朝鮮が消滅するまで脅威は終わらない。それがいつ、どのように起きるかわからない。しかし、半島の統一を容易にするため国際的な計画と準備の開始が時期尚早ということはない。

出典:Nicholas Eberstadt,‘Wishful Thinking Has Prevented Effective Threat Reduction in North Korea’(National Review, March 7, 2016)
http://www.nationalreview.com/article/432378/north-korea-nuclear-threat-reduction-strategies-need-updating

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