2024年7月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月11日

 北の核開発が過去20年間止められなかった間に、北の核やミサイル能力は着実に進歩しています。その意味でこれまでの対北政策は失敗でした。北への対処で「希望的観測」を排除すべき、との筆者の指摘はその通りです。特にこのことは、ここ3年の韓国の対北政策について言えます。しかし、今回の核実験、ミサイル発射を契機に韓国は急速に冷めた認識に変わっています。

 筆者はこれまでの政策を強く批判していますが、打ち出している「脅威削減論」の具体案は、それほど目新しいものとは思えません。筆者は、エンゲージメントは幻想でありグランドバーゲンは夢である、と言い切りますが、問題の解決を図ろうとする限り最後はグランドバーゲン方式しかないように思います。

代替案見つからぬ対北朝鮮政策

 今、多くの人が不満に思うのは決定的な代替案がないことです。その最大の理由は中国にあります。若干の変化はあるにしても、中国は経済、外交的に一貫して北朝鮮を守っています。しかし手を打っていかねばなりません。時間が経てば経つほど北の核能力は前進します。中国の北支援について中国に対価を支払わせるべきだとの筆者の指摘は注目されます。対話と圧力という二つの命題の間で手段を駆使していかざるを得ないでしょう。

 筆者は、長期的戦略と同盟国との協力の重要性を強調した上で、「米国の一方的行動により」対処すべきだと言います。94年の枠組み合意以降米国は一方的行動を避けてきました。しかし調整した上での一方的行動であれば、あながち悪いことではありません。昨年末に米国は北朝鮮に核問題を含めることを条件に平和協定交渉に応じる考えを伝えましたが、北がこれを拒否したと報道されています。平和協定交渉開始も一つの選択肢ではないでしょうか。 目下は制裁強化が重要です。米中交渉を踏まえ、安保理は新たな制裁措置を決定しました(決議2270)。日米、韓国は独自の制裁、追加措置を発表しています。しかし、日米韓だけでは動かせません。やはり中国の安保理決議順守が鍵となります。

  
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