機力×術力=戦闘力
「諸君、これが戦闘力の方程式だ。機力は有形、術力は無形。有形的機力の潜力を無形的術力が現力に変える。ところで、百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝るか」
秋山教官の設問で、また侃々諤々となった。
みなさんも、この頭の体操を考えてみてください。
秋山教官の『天剣漫録』にヒントがあります。
金ノ経済ヲ知ル人ハ多シ。時ノ経済ヲ知ル人ハ希ナリ (天剣漫録4)
つまり、お金は百発百中の砲一門のほうが百分の一で済みます。
しかし、この一門で敵百門を破壊するには時間が百分かかります。敵の百中一発の砲百門は一斉に発射します。そのうち一発がわが砲に命中する。金の経済は時間の経済に負けてしまいます。
秋山教官はつぎに戦闘力の要素を四つあげ、その比重を書き入れた。
攻撃力 5 (自社製品開発力)
防御力 2 (他社製品への対抗力)
運動力 2 (生産のFMS-Flexible Manufacturing System)
通信力 1 (営業のマーケティング・顧客情報管理力)
さて、平成の企業参謀はすでにお気づきでしょう。
秋山教官の戦闘力方程式と4要素比重は、()のように読みかえれば企業経営に使える。
その重要度の比は、あなたの企業の業界でのポジショニングによって異なってくるはず。
ここで、あなたの企業の基本競争力を比定してみるといい。
海軍応用戦術
一日の授業をおえて、秋山教官はやさしい顔になった。
「諸君、前期の講義は基本戦術に集中する。後期は応用戦術を論ずる。これは基本化学と応用化学のようなものだ。諸君も柔道道場では、防御の受け身、攻撃の投げ、その基本の形をまず習う。つぎに応用の乱取り稽古をつんで、いよいよ実戦に臨む。それとおなじだ」
秋山教官は基本戦術の講義にたっぷり1年をかけました。
翌年9月半ばからの新学期を迎えて、やっと応用戦術の講義がはじまる。
その冒頭で秋山教官は勝敗の定義をとりあげ、『孫子』(謀攻篇第3-1)を引用します。