2024年11月22日(金)

したたか者の流儀

2016年4月21日

 サベナ航空の内部でこのようなことが起きていたのであれば、一企業の破たんで済むが、国家レベルで起きれば、テロリストの温床になるのも想像できる。マイクロバスでやってきた家族は、蛇口をひねれば水もお湯もでる暮らしに感謝するが、次の世代は、言葉には不自由しないが、見えない差別や冷たい視線に耐え切れないことであろう。結果として、普通の国民は国家に対して義務感も期待も失せ、小金をもって小口はルクセンブルグ、大口はスイスに逃げているのだ。

徳政令を信じるお人好しはいない

 時々、徳政令が発せられ、正直にいえば許すという通告が出る。ベルギーの徳政令は、あまりにも財政がひっぱくするので、スイスやルクセンブルグ、他のタックスヘイブンにお金を移した人は、その金がなんであれ、過去は問わないので、国内に戻せば許す。さもなければ厳罰だという話だ。

 果たして国民は政府を信じているのだろうか。高い源泉税がお隣のルクセンブルグに行けば免除されたので、ベルギー国債を個人で買うベルギー人がゼロとなってしまった事件がある。

 ところで、ナポレオンが戦いに敗れたワーテルロー村の上にオランダ語とフランス語の言語国境が走っている。村人はバイリンガルでも、どちらが優勢かの議論もある。もちろんオランダ語系住民だろう。なぜかと言えば、オランダ語で水のことはワーテルで、フランス語ではローだが、先にオランダ語が来ているからやはりオランダ語系が優先だという彼らにとっては真剣な話だ。

 そんなことをやっているから、浮浪者やテロリストの温床になってしまうのだが、そいつらを取り締まる法律を作ることになっても、どちらの言語を先に出すかでひと悶着が起きてしまう国でもある。どうでもよいことにことのほか熱心な国でもある。他山の石。

  
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