このことは昨年の天津や深圳(しんせん)で死者を出した公共の安全事件を見れば分かる。これらの事案では中央の政策や手続きが、賄賂やコネのために、現場では全く無視されていた。中国が北朝鮮を制裁する政治的意図を持っているとしても、北の安定が中国にとっていかに重要かを勘案すれば、それが官僚機構を通じて実際に実行されることにはならないかもしれない。
出典:Shannon Tiezzi,‘It's Official: China Is Cracking Down on North Korean Trade’(Diplomat, April 6, 2016)
http://thediplomat.com/2016/04/its-official-china-is-cracking-down-on-north-korean-trade/
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1月の核実験から2カ月、2月の「衛星」発射から1カ月を経て、中国が安保理決議2270の全会一致の採決に加わったことは前進でした。3月2日の安保理決議採択には、密室の米中交渉が必要とされました。そのために中国が米国に対して種々の取引を迫ったことは想像に難くありません。時を同じくして米韓の間のTHAAD展開協議が突如延期されました。ただ、その後協議は続行されています。ともかく、今般中国が決議実施のために国内措置を執ったことは良いことです。
例外はあれど大きく前進した安保理決議
安保理決議採択について、メディア等は、中国も遂に資源、石油など重要貿易分野への制裁を認めたとして、画期的だと評価しました。しかし、それには筆者が指摘するように大きな例外が付されています。それは決議文を読めば分かります。石炭などの輸入規制には一部除外が設けられています。また、航空機燃料の規制も人道ニーズがある場合は除外されますし、北朝鮮と国外(北京などでしょう)の飛行のためであれば例外になります。さらに、これら例外の適用は一義的に当該国の裁量に任されていると読めます。
しかし、今回の安保理決議は今までのものと比較すれば大きな前進であり、既に間接的なインパクトを含め効果は出ているようです。中国丹東の朝鮮クァンソン銀行が閉鎖されたと報じられています。4月3日の北朝鮮国防委員会声明は、制裁ではなく米国が事態の収拾に乗り出すよう暗に求めましたが、韓国のメディアは「強硬姿勢からの変化を示唆か」と述べています。また、安保理決議制裁の対象となった北朝鮮船籍の船は公海か北の領海内で待機を余儀なくされ動きが取れなくなっているといいます。
中国の安保理決議実施については、今後一定期間、その実行振りを注意深く見ていくことが重要です。中国が制裁をきちんと実行していくのか、あるいは、例外規定を使って抜け穴にしてしまうのかを見定めることが必要です。
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