2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月10日

 ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、3月29日付同紙で、ルー財務長官のスピーチを引用して、経済制裁を多用しすぎると制裁の有効性が害され、米国に有害となり得る、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。

 経済制裁は相手に圧力を加えるのに、軍事力より安上がりでより有効なので、最近の米外交政策の特効薬となった。

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制裁を発動しすぎるとどうなる?

 しかし、ルー財務長官は、最近のスピーチで制裁の行き過ぎを警告した。

 ルーは制裁の効果と弱点を指摘することで、21世紀の米国の力につき重要な問題提起をした。制裁が有効なのは、米国の金融市場が世界経済の神経の中枢となっているからである。しかし、あまりに多くの制裁が課され、米国の制度が外国人にとって複雑で厄介になり過ぎると、外国人は米市場以外で決済をする方法を見出すであろう。それは米国の制裁と、それを支える米国経済を弱めることになる。特効薬は毒薬になる。

 イランに対する制裁は、米国のいわゆる「二次的」制裁が、イランでビジネスをする会社に米国の銀行や他の金融機関の利用を禁止し、制裁が多国間の協調で行われたため、有効であった。

 これに対し、50年にわたるキューバに対する米国一国の制裁は、効果が無かった。

 ルーはさらに「制裁の目的は相手国に政策の変更を迫ることなので、相手国が政策の変更に同意したら、利益を与えなければならない。そうでないと米国の信頼性が失われ、制裁で政策の変更を求めることが困難になるだろう」と言っている。

 ルーはまた、制裁の効果が無い場合に追加制裁を課すことに懐疑的である。クリミアと東部ウクライナに関わる西側の制裁に対し、ロシアは何もしていないが、追加的制裁ではなく、忍耐が必要であると述べている。

 制裁は抗生物質と似ている。抗生物質は与えすぎると、効かなくなる。

 同様に制裁も過度にしないよう注意すべきである。

出典:David Ignatius,‘A grim warning against America’s overuse of sanctions’(Washington Post, March 29, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/a-warning-against-the-overuse-of-sanctions/2016/03/29/9598557c-f5f5-11e5-8b23-538270a1ca31_story.html

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