2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月10日

 制裁は有効な外交政策であるが、使い方には注意が必要である、との指摘です。その通りでしょう。

 米国の制裁の一番の武器が、米国の銀行や他の金融機関へのアクセスを禁じることであるという、ルー長官の指摘は正しいです。イランへの制裁が効いたのは、まさにこの点でした。

 また、制裁は相手国が要求を呑んだら、相当の利益を与えるべきである、というのもその通りでしょう。イランが核開発を規制したら、イランが世界市場に戻ることができ、イラン経済を活性化できる、ということが、イランが核開発の規制に合意した最大のインセンティブでした。

制裁が効かない好例は北朝鮮

 他方、制裁が効かないこともあります。キューバに対する制裁が一つの例ですが、これは論説が言っているように、米国一国だけが実施していたということのほかに、キューバのような国は、厳しい生活に耐えることが可能で、いわば制裁慣れしていたとも言えます。ちなみにキューバに対する制裁については、キューバのカストロ政権を罰するということが、実質意味を失っていたことが指摘されます。

 制裁が効かないいま一つの例は北朝鮮です。北朝鮮については、北朝鮮の経済の生命線を握っている中国が、真剣に制裁を実施しないことが、制裁が効果を上げない最大の理由であり、今後とも中国は表面的には制裁の強化に合意すると言っても、実施面では手を抜き続けるでしょう。

 なお、米国等西側は、北朝鮮が核を放棄することを制裁解除の条件としていますが、西側が、どのような政治的、経済的インセンティブを与えようとしても、北朝鮮が核を放棄することはあり得ないでしょう。従って北朝鮮に対する制裁は今後とも続くことになります。

  
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